モテテク記事が本当に伝えたかったこと

そんな時に出会ったのが二子さんである。私よりずっと年上の二子さんは、今まで出会った人間の中で一番素直な人だった。「可愛い」と言えば「そうかな?嬉しい」とニヤニヤするし、笑いすぎて泣く。酔うと誰に対しても少し甘えたような素振りになって、翌日には「何も覚えてない」と呟いた。みんなの話を目を見て聞いて、顎の下で手を組むのが癖だった。二子さんの言動はモテテク特集に書かれていることとも被ってたけど、でも、一体誰が二子さんのその振る舞いを「モテテク」と感じるだろう。彼女はそんなつもりでやっていない。ただただその時の感情に身を任せているんだとそばにいればわかった。二子さんは、素直さのハンドルを脳じゃなく肉体の方に持たせていたんだと思う。彼女のそばにいるうちに、一つの結論に辿り着く。世の中に溢れる「モテテク」は計算された方法論だけど、その根源にあるのは「素直であれ」なのだ。〜人の心を動かすのは素直さだから、みんな素直になりましょう。そうすればきっと、みんながあなたの魅力に気づくはず〜本来、あまたあるモテテク記事が伝えたかったことはこれなんじゃないか?だけどそれじゃああまりにも抽象的だから、pv数を稼ぐためにはもっと具体的な方法がいる。そうして捻りだされたのが、ボディタッチだとかよく笑うとかなのでは?流通に乗るために、根源にある本当に大切なことの濃度が薄まっていくことはあまりにも多い。慈愛から生まれたボランティアが金稼ぎに見えること、思いやりから生まれたアイディアがかえって不便なものになってしまうこと。それと同じような道を辿って、モテテクは私たちの元に届いていた。無数の記事たちが本当に伝えたかったことは「素直に生きよう」だったとしたら開眼!!!

モテテク憎んで素直さ憎まず。私はこれまで、自分がいかに馬鹿げたことをしていたかに気づく。頬が熱くなる。でももう、それを甲冑で隠そうとはしない。二子さんのようにただただ頬を赤く染め「恥ずかしいな」と呟く。だって、それが私の本心なのだ。テクニックとかじゃなく、ただただここで、感情に肉体を委ねること。楽しい時は笑って、興味がなければ黙ること。水面に揺れる小瓶のように、気持ちに従っていればいい。そうすれば、瓶も私も誰かに届く。テクニックから解放された私はまた一つ生きていくのが楽になって、いつか本気で二子さんと、心ゆくまで飲みたいと思った。

TEXT/長井短