本を読むことは、人生に必ずしも必要ではないけど
私はときに矛盾することも書いている。彼は私に心を開いていたと書き、心を閉ざしていたと書いている。私といるとき無口だったと書き、口数が多かったと書いている。(中略)それらすべてがそのときどきで真実だったのかもしれず、現在の気分しだいで思い出す中身まで変わってしまうのかもしれない。(p264)
読書は人生に必ず必要なものかと聞かれたら、そうではないと私は答える。そもそも必要のないものだから、どんなジャンルのものを年に何冊読もうと自由だ。私も、今はなぜか小説ばかり読んでいるけれど、時期によってノンフィクション以外手が伸びないときもある。年に100冊以上読んでいたこともあるが、昨年は実は50冊に届かなかった。けっこう時間があるはずの私ですらそうなのだから、仕事や家庭で忙しい人が集中して本を読む時間を作るのはなかなか大変だと思う。
それでも『話の終わり』のような本に出会うと、世の中にはもっと面白いものがあるはずだと前向きになれる。平凡でしかないはずの物語は、語り方によって奇妙になり、シュールにもなる。フィクションの中にこそ真実があったりする。2023年もこの連載で、そんなふうに(いろんな意味で)前向きになれる本を語り、読む人に、実際に手に取る候補の1冊として考えてもらえたらいいなあと思っている。
Text/チェコ好き(和田真里奈)
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