中年だって、没入できる物語に出会うことはできる!

自分の場合は三大性癖には入らず次点という形になってしまいそうだが、「運命じゃない人」も、私は物語のモチーフとしてかなり好きなのだなと、今回マンローの小説を読んでいて気づかされた。「この人となら人生をやり直せる」と思うまでに距離が近づいた人に、去られる。自分の人生に深い影響を与えた人物と、疎遠になる。現実の人生も、よく考えればそんなことばっかりだ。しかし、だからこそこの「代わり映えのしない人生」は、魅力的なのではないか。

「作家は常に異なる題材で同じ主題を追求し続けている」みたいな話はよく聞くけど、読む側だって同じで、自分が気に入る物語は小説だろうと映画だろうとアニメだろうと漫画だろうと、よくよく分析するとストーリーラインが似ていたりする。そして、短期間に創作をジャブジャブ浴びる二次創作の世界にいると、そのことに気が付きやすい。

中年になると物語に没入しにくくなるなんて声も聞くけれど、「(物語における)性癖」はどんな人にだって、必ずある。自分が大好きだった漫画やアニメを分析して、傾向をつかめば、きっとまた、あなたを没入させてくれる物語に出会えると思う。

30代半ばになると、もしかしたらこれからは、自分の人生が大きく変わることはないかもしれない……なんて思うことがある。でも、ドラマチックじゃなくたって、代わり映えしなくたって、日々は味わい深いし、物語は私たちを夢中にさせてくれる。

そういうわけで、面白いので三大性癖の分析はぜひやってみてほしいし、もしも「運命じゃない人」という言葉にピンときたら、『イラクサ』を読んでみてほしい。そうすればきっと、この穏やかで退屈な日々を、無理に変えなくてもいいのだとわかるから。

Text/チェコ好き(和田真里奈)