仕事と、育児&家事といった家のことを両立させているワーキングマザーのわたしですが、時にはお休みをいただくこともあります。具体的には月に二~三回、夫に息子の夜の世話を頼んで、単身で夜の街へと繰り出す。これが母でもなく妻でもない“わたし”を保つために必要な時間なのです。
だいたいは事前に友達に声を掛けておいて、一緒に飲むことが多いけれど、時々は誰も予定が合わなかったり、あと最近ではこのご時世なので、飲む予定の相手が濃厚接触者になってしまったりとかで、ぽかんと予定が空いてしまうこともある。けれども、予定がパーになったからといって、外出は取りやめなんてことは、もちろんしません。だって月に数日しかない貴重なフリーディ。急遽、誰か一緒に飲んでくれる相手を探す場合もあれば、馴染みのバーなどを巡る算段を立てることもあります。
産後、あってよかったとシミジミ思うことのひとつが、「店主や店員などと顔見知りで、ひとりで行けるバー」の存在です。わたしには歌舞伎町、ゴールデン街、新宿二丁目など新宿近辺に数軒、好きなバーや小さな飲み屋があって、飲み相手が見つからない日や、友達と飲んで別れた後に、ちらりと寄るようにしている。だいぶご無沙汰していてちょっと気まずい思いでドアを叩くことが度々なのだけど、客なので大概、歓迎してもらえるし、例えその日カウンターに立っているのが見知らぬ人であっても、一見で入る店よりかはなんとなくリラックスして飲める。普段いるコミュニティとは離れた相手と、しゃべることができるのも、新鮮で楽しい。
ひとりでバーに行ったらすること
さて、ひとりでバーに行ったときにできるだけしていることといえば、お店の人に一杯、ご馳走することです。若い頃はそんな頭はまったくなかったけれど、中年となったいまは、むしろ相応しい行いに思えるし、「わたしってば、世慣れた大人っぽい!」という満足感を味わえるというか、なんとなく飲み方をわかっている感じでかっこいい気がする。二軒目か三軒目に立ち寄ったときは、もうあまりたくさんは飲めないこともあって、あんまり会計がいかなくて申し訳ないし、そんなに頻繁に顔を出せているわけでもないので、せっかく寄れたタイミングで微々たる額でもお店の営業に貢献したいという気持ちで「何か一杯、飲んで~」とやるわけです。
なかなか自由には飲みにいけない身にとっては、営業中であれば、いつでも行けば迎え入れてもらえる飲み場は、本当にありがたい。その場所にずっと継続してもらうために、わたしは金を落とす。
Text/大泉りか