気がついたら、もう2021年が終わろうとしている。振り返れば、緊急事態宣言にワクチン接種にオミクロン株にと、とにかく今年もずっと、コロナに翻弄されまくりの1年だった。来年こそ海外旅行に行けたらいいなあ……と相変わらず成田空港の方角を見ながらため息をついているが、こればっかりは個人の努力ではどうにもならないので、マスク装備と手指消毒をしつつ天に祈るしかない。
コロナ以外の2021年の思い出といえば、私の場合はもう、この連載でも書きまくっているけど「二次創作デビュー」、これしかない。唐突に推しカプに出会い、生活のすべてが変わってしまった。
今年の最後にひとつ暴露すると、私がハマったのは王道のBLではなく、NLと呼ばれる男女カップリングだ。BLには(たぶん)ない男女カップリング独特の特徴として、結婚や出産はどうあるべきかという女性たちの願望が透けて見えるところがあり、観察しているとやっぱりなかなか面白い。個人的にはあまり性癖ではないけれど、オメガバース(男が女を妊娠させるだけでなく、女が女、男が男、女が男を妊娠させたりする)なんて、本当に女オタクならではの発明だと思う(BLにもオメガバースあるけど)。
今回はそんな2021年を、20年ぶりくらいに読み返した村上春樹の『ノルウェイの森』について語らせてもらいつつ締めくくりたい。『ノルウェイの森』と二次創作の話を同時にするな! という感じだが、今年最後なので大目に見てください。
生きる力がわいてくるポジティブな小説
『ノルウェイの森』のあらすじは、言わずもがなである。主人公は、キズキと直子のカップルと一緒に三人で青春時代を送っていたが、キズキがこの世を去ってしまう。大学生になった主人公は、直子と性愛関係を築きつつ、新たに現れた緑とも交際するようになり、遺された者として、キズキと直子と過ごした微妙な青春時代を乗り越えていく。よく「エロい」「性描写が多い」と言われる村上作品だが、いつも二次創作を読みまくって脳が麻痺している私の20年ぶりの感想は、「覚えていたのよりエロくなかったな……創作の参考にしようと思ったのに……」だった。まあそれはいいとして。
主人公がすぐに女の子と寝てしまうとか、女性が都合よく書かれすぎているとか、いろいろな批判があるのはごもっともである。しかし、個人的にはやっぱり『ノルウェイの森』は好きで、生きる力がわいてくるポジティブな小説であると思った。
男女カップルのゴールは本当に、結婚、そしてその先の出産しかないのか。それが個人の「性癖」や「願い」であるぶんには構わないけど、私はやっぱり、そんなことはないと思う。死者は生者に生きる力を与えるし、叶わなかった恋だって、満たされなかった気持ちだって、ちゃんと個人の中で息づいて、その後の人生を彩ってくれる。『ノルウェイの森』だけを読んでそうなったわけじゃないけど、私が独身のままで平気でいられるのも、このあたりの価値観がかなり強固だからだと思う。主人公の中で生き続けるキズキ、そして直子は永遠だ。死や別れを乗り越えてその先を生きようとする主人公に、私は20年ぶりにもう一度、明るい希望のようなものを感じた。
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