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  • 2015.02.09

ありがとう ほんとにつまらないものを贈れる恋人でいてくれて

バレンタインデー特集、第2回目は「バレンタインクッキング大失敗編」!バレンタインデーの裏側で殺人事件(未遂)やカップルの破局といったドラマが生まれていたとは知りませんでした。今回も様々なバレンタインデーの大事件を、短歌にのせてお送りします。

佐々木あらら 初体験 処女 童貞 バレンタインデー エロ短歌
An Affair with Chocolate by (Sarah Robinson)

「女の子の側から愛を告白するなんて、ふだんは恥ずかしくてできないものだから、バレンタインデーだけはその立場が逆転しても許される日」

 むかしむかし、僕が初めてバレンタインデーを知ったころには、そんな風に説明されていました。

 時代は流れ、どちらから告白しようと誰も気にしなくなったいま、バレンタインデーは「女性だけが、中年にさえも渡さなきゃいけない第二のおとしだま」みたいになってきています。

 男女を取り巻く状況が変わってきたのだから、バレンタインのほうも気分を変えて、たとえば「年に1回、男子が厨房に立ってお菓子作りに挑戦する日」とかに変わればいいのに。

 でも、料理に慣れていない男子が、粉まみれで洗い物だらけのキッチンを放置しそうだから、お母さんとか奥さんが後片付けにキレそう。

「お菓子の手づくり」って、理想と現実がクロスオーバーする、怨霊の巣窟だったりします。

 というわけで、今週は「バレンタインクッキング大失敗編」をお届け。

彼氏に岩をあげました

ナツカエキゾティカさん(東京都)
エピソード:
 手作りチョコをプレゼントしたのは人生でたった一度。
 女子力もなく、お菓子作りに興味もなかったけれど「溶かして固めてナッツ入れればいいわけでしょ?」と、大量の板チョコを溶かして酒のつまみ用のミックスナッツをぶち込み、子供の握りこぶし大に固めたものをラップで包んで彼にプレゼントしました。
 後で聞くと「見た目が岩のようで、硬くて甘じょっぱくて、半年以上カバンに入れっぱなしだった。もうチョコは作らなくていいからね」と優しく言われました。
 でも「どうしても腹が減った時に非常食としてガリガリやるには歯ごたえもあってとても良かった」とも。
 言いつけを守って、あれ以来お菓子は作っていません。
 15年前、今の旦那と付き合い始めて最初のバレンタインデーの事です。

岩みたい 苦笑い君がガリガリと前歯で噛んだ非常用チョコ(ナツカエキゾティカ)

 旦那さん、包容力のある人だなあ……。うらやましい限り。

 このチョコ岩、映画の伏線とかに使えそうですね。

 旦那さんがいろいろあって雪山で遭難。絶体絶命のところで、ふと、荷物の底に入っていた恋人の手製の岩を思い出し、それをかじりつつ救援を待ち続ける、みたいな。

 岩をガリガリしながら救援を待つ織田裕二まではイメージできました。

 もしかしたら次世代の保存食として、非常袋に常備されるアイテムになっているかもしれません。去年、自衛隊と井村屋が開発した羊羹みたいに。

 たぶんそのときの記憶はないと思いますが、チョコ岩のレシピ、ぜひCOOKPADにアップしてください。逆方向で人気が出るかもしれませんよ。使い道はあなた次第。

「甘くない固い愛」って意味だよね 失敗チョコをくれた理由は

彼氏を殺しかけました

はるかさん(東京都)
エピソード:
 バレンタインの日、外国人の彼氏に手作りのブラウニーをあげました。
 以前から彼には「ナッツアレルギーだ」と言われていたのですが、ピーナッツしかイメージしていなくて、うっかり生地にココナッツを練りこんでしまいました。
 あやうく殺しかけました。
 翌日に栗羊羹をすすめたら、栗は英語で「Chestnuts」といってナッツに含まれるらしく、ただ笑っていました。
 殺さずに済んでほっとしています。

ブラウニー あなたの好物混ぜてみた それはアレルギー あわや毒殺(はるか)

 まさか「バレンタインのお菓子作り」なんて平和そのものの風景から死の匂いが漂ってくるとは……。

 深刻なことにならなくてほんとによかった。

 相手が大人で紳士的に断ってくれたからいいものの、もし女の子がちょっと強引な子で、男の子が押しに弱い子だったらと思うとぞっとします。

 もし、若いころの僕がアレルギーで、大好きな女の子からナッツ入りのチョコレートをもらって、「ササキくん、いま食べて味の感想聞かせて!」なんて言われたら、たぶん、食べたと思う。恋のためなら死もいとわない、それが童貞だから。

 調べてみると世の中には「チョコレートアレルギー」の人もいて、バレンタインデーの直後にアレルギーが発症して病院に来る人が多くなることから「バレンタイン症候群」という呼び方もあるんだそうです。

「ごめん、僕、チョコレートアレルギーなんだ、せっかくの気持ちだけど、受け取れないよ……」

なんて受け取り拒否のされかたをされている女の子もいるんでしょうね。

「お酒飲めないんで」とミエミエの嘘をつかれてデートを断られてきた苦い経験を振り返ると、一度ぐらいは、こんな風に断ってみたい気もします。

義理チョコは溶かしこまれた本心や釘におびえず食えるから好き

手作りプレゼントに飽きられました

よこまりさん(埼玉県)
エピソード:
 お菓子作りが趣味の私は日ごろから彼氏に手作りクッキーやらマドレーヌやらをあげていました。
 バレンタインデーの直前に「手作りが食べたいな♡」という彼の言葉を期待して、
「市販と手作りと、どっちがほしい?」と何度も何度もきいていました。
 もちろん、手作りを渡しました。
 でも、反応は適当。
 バレンタインデーぐらいは市販の高くて美味しいチョコが欲しかったようです。
 初めて手作りを渡した時は箱も捨てられないほど大感激だったくせに!
 そんな反応同様に互いの感情は薄まったままで、夏前に破局しました。
 お返しにはGODIVAを頂戴しました。

3月は一緒にGODIVA食べようね 溶かし固めたチョコで口付け

 どんなに大きな幸せも、繰り返されるとそれが当たり前になって、飽きてしまうものです。

「感覚の順応」というのは生物の重要な仕組みで、継続的な刺激、たとえば強い香水の匂いのする部屋に入っても、しばらくすると嗅覚が鈍感になってそれを感じなくなる、というような現象です。

 そういう仕組みがあるから、生物はどんな環境でもうまく生きていくことができるわけですが、こと「愛に関する順応」になってしまうと、なんでしょう、なんだか逆効果になっているのかもしれません。

 思えば「ありがたみ」という言葉も「めったにないこと」という意味なわけですから、同じことを繰り返されるとありがたみは薄れていくのも当然なんでしょう。

 とはいえ、刺激を止めれば、やがては感覚の鈍化も回復してくるはずなので、要は「忘れた頃にあげる」ぐらいがいいということでしょうか。

 たぶん去年わかれた彼氏はちょうど「感覚の順応」が消え、元に戻った頃です。きっと今頃、よこまりさんの手づくりの味を思い出して、別れたことを強く後悔していることでしょう。

 ま、そうじゃなくてうまいこと新しい彼女の刺激に夢中になってるかもしれませんけど、とにかく、後悔しているはずだと思い込んで、別れたつらさを乗り切っていくのがいいと思います。

今年から私のチョコを食べれないあいつを呪ってひとりで食べる

 というわけで、バレンタイン特集の2回めをお届けしました。

 引き続き「バレンタインデーの思い出&短歌」を募集しています。今回のエピソードで自分の記憶のふたが開いた、という方、ぜひぜひ。

 いよいよ今週、バレンタインデー本番ですね。

 素敵なバレンタインデーになりますように。

 素敵じゃなかったら、ぜひ、その体験を短歌にして、送ってくださいね。フレッシュな怨霊、待ってます。

 「バレンタインデーにまつわる恋愛怨霊エピソード&短歌」
 エピソードは長く書いてくださってもオーケーです。こちらで短めに整理してリライトさせていただきます。ご了承を。

 ではまた来週。

Text/佐々木あらら

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ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

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