オンラインのコミュニケーションには絶対に超えられない壁がある
――現在日本でソーシャルメディアを使っている人は、コミュニケーションとろうとして使っていると思いますが、それはあんまり意味がないことなのでしょうか。宮台さんから見るとなんでそんなことをしているんだろう、という感じですか?
宮台:それに答えを出すためには、まず、オンラインのコミュニケーションとオフラインのコミュニケーションが、今の段階で、どの程度同じで、どの程度違うのかが、ポイントになります。
3.11の震災のあとに、僕はよその子とかも連れて自分の別荘に疎開させましたが、そういうディープな助け合いは、今のオンラインのコミュニケーションを見る限り、まったくありません。ただし、オンラインで成功した助け合いが二つありました。
第一は、被災地での情報のやりとり。マスコミがまともな情報を出さず、しかも音声電話が通じないという状況で、3G回線のインターネット文字情報が通じて、最低限の情報をやりとりしていました。
第二は、東京近辺ではギークハウスというシェアハウスをしている人たちが、インターネットで情報を発信して、帰宅困難者たちにお金をとらずに場所を提供する活動をしていました。
僕も帰宅困難でたいへんな思いをしましたから、この活動の意義を評価します。
その二つは特徴的でした。一つは救難情報。もう一つは「ここにくれば助かるぞ」という救難情報と併せた場所提供。
オンラインのコミュニケーションは、救難情報と場所提供という災害時の便益を提供できることがわかりました。
でも、知らない誰かをおんぶしてどこかに連れていくとか、知らない誰かを車に乗せて自分の家や別荘に連れていくとか、そういうことまではとてもできません。
なぜかというと、答えは簡単で、「信頼できないから」です。
――そうですね、信頼という部分は簡単には越えられない壁ですね。
宮台:はい。少なくとも今のところ、オンラインのコミュニケーションで形成できる信頼は、オフラインで形成できる信頼の足元にも及ばないことが、はっきりしました。
もちろん、そのことを踏まえても、役に立つオンラインのコミュニケーションはあるのですが。