“世界の蜷川”が育てた!? 「男を立てる」「女として立つ」処世術
本書のもうひとつのポイントは、実花さんが自分の中のオンナに振り回されるのではなく、うまいこと“オンナを利用している”こと。
「自分で出来ることが増えるし、相手が頼ってもらって嫌じゃないなら、男子に頼れるところは頼ったほうがいい」
「男の人に対しては、全てにおいてベースはかわいらしくという姿勢でいる」
と語り、それが写真家として男性の被写体の魅力を引き出すうえでもプラスに作用しているのだとか。
だからといって、そこに男性に依存するような態度や、女性としてのコンプレックスが一切感じられないのが彼女のすごいところです。
その秘密は、彼女の家庭環境にあると思われます。
実花さんの父親は、世界に名だたる演出家・蜷川幸雄。
しかし、彼女が小さい頃はまだまだ無名で、稼ぎも母親のほうが上だったとか。
それでも母は、娘の前でいつも父親のことを立て、尊敬する姿を見せていたそうです。
そのせいで、「男の人は立てるものだという考えが無意識のうちに染みついている」と言います。
その一方で、外で働く母親に代わって面倒を見ていた幸雄さんから、徹底して男女平等を叩きこまれたという実花さん。
その教えとは、「いつでも男を捨てられる女であれ」「経済的にも精神的にも自立せよ」「出来るだけたくさんの男と付き合え」「男にだまされるな、だませ」「自分が正しいと思ったら、何が何でも突き進め」など、とても先進的なもの。
この英才教育が、現在の実花さんのアイデンティティを形成していることは間違いないでしょう。
“フツウ”以上に努力しないと“フツウ”の幸せは手に入らない!
本書のタイトルにある“オラオラ”とは、決して「男勝りに生きろ」「肉食系の恋愛をしろ」「恋も仕事も子育ても全部力を抜くな」という意味ではありません。
「みんな全部手に入れているかというと、そんなこと全然なくて、自分の今の状況をいかに愛せるかっていうだけ」
「今はこの状況が幸福だなって思っているから幸福に見えるだけで、裏側から見てみると出来なかったことが同じくらいの量ある」
ここだけ読むと、実花さんもまた、“フツウ”の現状を愛することで満足度を下げる「現状維持女」のように見えます。
しかし本書をよく読むと、彼女は求めている“フツウ”のハードルが、人よりもずば抜けて高いだけなのだとわかるでしょう。
男目線の評価に依存して生きるのではなく、自分の価値観や理想にしたがって“女であること”を主体的に楽しんで生きること。
それこそが、彼女にとっての当たり前であり、“フツウ”の幸せなのです。
しかしそのためには、経済的にも精神的にも男から自立しなければいけません。
“マンションを買えば、愛だけで男が選べる”というのは、かつて女性誌『FRaU』が掲げた名コピーですが、いまや“フツウ”の恋愛とは、“フツウ”以上に努力しなければ手に入らないものなのかもしれません。
“フツウでいいじゃん!”と思っている限り、あなたには“フツウ”以下に甘んじる現状しか待っていないでしょう。
蜷川実花さんの“オラオラ”な生き方を参考に、あなたも「脱!フツウ」の重い腰を上げてみませんか?
書名:『オラオラ女子論』
著者:蜷川実花
発行:祥伝社
Text/Fukusuke Fukuda
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