すべてのビッチに捧げられた映画
最後に、私が最も愛するビッチ映画をご紹介します。
『チェイシング・エイミー』は全てのビッチ、かつてのビッチ、そしてビッチを愛した男性のためのものと言っても過言ではない映画です。
主人公ホールデンが夢中になったのはノリがよくてチャーミングなアリッサ。
当初は女性の恋人がいる彼女との恋愛を諦め男友達として仲を深めていきますが、徐々に想いが強くなったホールデンはついに愛を告白してしまいます。
アリッサは想いを受けとめてくれたものの、てっきりレズビアンだと思っていた彼女が、これまで男女を問わず様々な相手とありとあらゆる「経験」を積んでいたことが発覚。
動揺するホールデンはアリッサ自身や彼女とのこれからよりもその過去に囚われてしまう……
元カノよりも元カレの影に、そして恋人との経験の差に強くショックを受けてしまうホールデンの陳腐で、だからこそ根深いコンプレックス。
そして彼を深く愛しながらも一歩も引かずに胸を張るアリッサの台詞の数々はインパクトとリアリティがあります。
「正しくても間違ってても、それは全部私の選択で、あなたに謝ることなんか何一つない!」
「生まれつき地図を持たされてたわけじゃない、だから全部を試したの!あなたに出会って、もう探す必要がないって分かるまで…!」
「愛してる。これからもずっとよ。だけど私はあんたのお抱え娼婦じゃない」
などなど。
男とは、女とは、恋とは、セックスとは……
誰でもがんじがらめになってしまいがちな固定観念と正面から向き合うこの作品、実は監督の自伝的なストーリーだと言われていて、アリッサを演じた女優も本物の元カノだったのだとか。
更に本人も出演していて、一番おいしいところをかっさらいます。
まさに究極の等身大映画。熱意が違うぜ。
すべての「ホールデン的男子」のみなさまにもぜひ観ていただきたい一本です。
ついつい映画ジュークボックスと化して熱く語ってしまいました。
女の数だけ生き方はあるけど、ビッチの条件は「支配されない心」なのかもなぁと改めて思った次第です。
どんな人とどんな関係を持っても、誰の所有物にもならない。
一番愛すべき自分を一番上手にかわいがれる。
そんな最高にかっこいい「おもねらない女」としてのビッチに、現実でも映画でも、まだまだめぐり会いたいです。
Text/気絶ちゃん