20代までは不安になって当たり前。だからもっと楽しんで!

脳科学者・中野信子インタビュー

――20代女子向けのサイトなので、女子大生の子にも話を聞くんですけど、「インスタ映え」が笑いごとじゃないみたいで。寛容さがなく「私全然きらきらしてない」「私なんか全然だめだ」「こんな私じゃもう恋愛できない」みたいに、どんどん小さくなっているようなんです。

中野

見せびらかすための恋愛なんてしなくていいのに! もしも、そんな人が旦那になっちゃったらめんどくさいし大変ですよ(笑)。結婚を焦るような話も聞きますが、一生のうちひとりさえ見つかればいいのだから、もうちょっと長期戦でいくべきですね。

――20代の焦りというか、不安になる感覚はすごく分かるんです。

中野

私の年齢になるまでまだまだ長いですよ(笑)。だから、そこで足踏みしているなら、すごくもったいない。不安な人もいっぱいいると思うんですけど、不安ってだんだん感じなくなっていくんですよ。ちなみに10代の頃が一番不安定なのは、脳の仕組みとして不安が大きくなるようにできているからなんです。

――脳が不安に思うようになっているのはなぜですか?

中野

若い時期は人脈も少ないし対処の方法を知らないので、はじめから不安側に寄っていた方が安全だからです。危険要因を見つけるのが楽になりますからね。ああ、わたし今不安だわ、って感じるのは、彼氏のせいとか、周りの人がキラキラしてるせいでもない。不安になると原因を見つけようと思えばいくらでも見つけられますけど、本質的には脳のせいです。
ただそれが、20代の半ばからだんだん変わってきて、なかなか不安になりにくくなっていくのです。そうすると、その不安な状態っていうはもう二度とやってこないので、もったいない。青春の不安は今だけだから、楽しんでほしいですね。

――今31歳なんですが、体感的にわかります…!

中野

30代40代になったらもう全然変わってきますよね。というのも、例えば境界性人格障害や発達障害、高機能自閉、そしてリストカットしてしまう子といった、知能はあっても社会生活に難を抱えている人に対して、「40歳がひとつのライン」と臨床の先生はおっしゃっています。そのラインを超えれば、本人は不安に陥らずに生活していけるからと、経験的に実証されているみたいです。

――X(旧Twitter)の若い方のアカウントでも「30すぎたら死にたい」、みたいな発言をたまに見るのですが、早いってことですね。

中野

はやい! 30過ぎたら死にたくなくなってくるから。だから今不安のある子たちは、素敵な色気のあるおばあさんになってください。年齢を重ねても、矛盾とか、うまく自分の中で摂取していけば、どんどん色気のある女性になれる。なんか、発酵食品と腐った食品って違うじゃない。どっちかといえば、おいしく発酵したいですよね。あ、発酵…熟成っていうんですかね、ふつう(笑)。

(後編-終-)

中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者。東日本国際大学教授。1975年東京都生まれ。科学の視点から人間社会で起こりうる現象、および人物を読み解く語り口に定評がある。
著書に『世界で活躍する脳科学者が教える! 世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文春新書)、『シャーデンフロイデ』(幻冬舎)ほか多数。

初出:2018.04.18