「お金で愛は買えるのか?」と夜の世界について/鈴木涼美インタビュー

「お金で愛は買えるのか?」

ヒモの男性を養っていたり、ホストにハマるホス狂い女子のように、男性にお金を貢ぐ女子がいる一方で、男性から金銭的援助を引き出すパパ活女子・港区女子がSNSを中心に話題になっています。
愛をお金で買えたら便利なのに。でも人は、お金と交換した愛が“本物なのか”と疑問を抱きます。私たちは、お金を通じて何を満たしているのか? という疑問から本特集『愛をつなぐお金』がスタートしました。
元セクシー女優、元新聞記者という異色の経歴を持ち、『身体を売ったらサヨウナラ』『愛と子宮に花束を』などの著書がある鈴木涼美さんにお金と愛、またそれらと切り離せない夜と昼の世界と女性の関係についてお話を伺いました。

鈴木涼美さん紹介画像

使う金額は自分の価値の証明

――今回の特集テーマは「お金で愛は買えるのか」です。
夜の世界と「お金で愛を買う」ということはどうしても近い印象があるのですが、鈴木涼美さんが夜の世界に入ったきっかけってなんですか?

私は「ブルセラ」や「援助交際」が流行った世代なので、そういう世界が身近にあったんです。初めてブルセラショップに行ったのは高校生の頃。ブルセラショップといってもギャルのたまり場みたいになってて。「男性に対して資本主義的に売ろう」なんて思っていたわけではなく、当時一緒に渋谷で遊んでいた仲間が通ってたからついていっただけですね。店内にはプレステとかも置いてあって、そこで女の子とわいわい遊んでるのが楽しかったんです。

――割とカジュアルな場所だったんですね。

一応、お客さんが来たらパンツも売るんですよ。マジックミラー越しに「5番の子のパンツとブラジャー」とか言われて、注文が入る仕組み。
そうすると、自分がどれくらいモテるのか、すごくわかりやすくお金で数値化されるんです。現実世界では中々ないですよね。

――面白いですね。

鈴木涼美さんがインタビューを受けている画像

でも、女の子が集まると、売れる売れない以外にも、実はいろんな尺度のヒエラルキーができますよね。例えば、「この子は下着は売れないけど、eggの表紙に出てて一番ギャルい」とか「ダサめで門限が19時だけど、おじさんウケがよくて下着は売れる」とか(笑)。
自分は何においてなら勝負できるってことがわかるから、女性としての価値が多様だっていうのが目に見える面白い場所でしたね。

で、ブルセラショップに通わなくなってからも、やっぱり楽しかったし、そういう世界に身を置きたいなと思って、大学入学後にキャバクラで働き始めました。

――ホストクラブにも行かれていたとお聞きしました。

キャバクラのアフターで行ったのが最初です。だから最初は自分でお金を払ってませんでした。それに、女子高生の頃から「男の人に対してお金を払う」という概念がなくて。その場のパーティーっていう感じで、自分のお金で行くときも、最低料金の2万円で全然楽しい。でも、200万円とか使う子もいますよね。

――なぜ彼女たちはその金額を使うのでしょう?

以前は、よっぽどさみしいからかなと思っていたんです。けど、彼女たちの気持ちを最近聞いてみるようになって、そうじゃないってわかってきました。

ホストに使う金額が大きいってことは、自分が稼ぐ金額が大きいってことですよね。それって、「私は可愛いから、キャバクラと風俗どっちでも働けば300万稼げて誰よりも高いボトルがいれられる」っていう、自分の女性的な魅力が他の子よりも高いってことの証明なんです。

――ホストのために使ってるわけじゃないんですね。

そうそう。風俗みたいに個室じゃなくて平場で、しかも、その日一番お金使ったお客さんには、ラストソングっていうホストが彼女の横で歌ってくれるシステムがあるんです。「自分は他よりすごい人なんだ」っていう、ビッグな気分になれる仕組みがあって。そっちの方がたぶん動機付けとしては強い。

そもそも、貢ぐことが好きな女性は一定数いるけど、数百万も使うほど貢ぎたい欲が強い女性ってあんまりいないと思うんです。だって、ヒモに月10万円お小遣いを渡す女性はいても、300万円渡す人はほとんどいないですよね。でも、使うお金が自分の価値の証明になるホストクラブって場所なら渡す。だから貢ぐこと自体に幸せを感じられる人って少ないと思いますね。

それに、みんな担当(※贔屓のホスト)が好きだと思い込んでいても、彼がやめたりすると、あっけなく他の担当をみつけてまたお金を使う。対象が入れ替えられるって、別に愛のなせる技じゃないですよね。