外見の美しさのヒエラルキーはなくなってきている

―恋愛体質の人の方がもしかしていいのでしょうか?

植島:そうですね。
話は戻りますが、女性も不倫できる世の中になったということは、本当に人間の歴史の中では珍しくいいことだと思いますよ。
やっとそうなったんだなって感慨深いものがある。
平安時代の女性の日記で『とはずがたり』という作品があります。
女の人が天皇に恋をされて、子どもを身ごもるんだけど、そのときはすでに愛人がいて、男性を転々とするという源氏物語の女性版なんだけど。
その物語を最初に読んだときは、すでにあの時代にこういう人がいたんだって思ってすごく痛快でした。

―奔放な女性はとても魅力的に感じますよね。

植島:そういう相手がいるってことは、つねに男に好かれるってことでもあるでしょ。
やっぱりそういう人は姿、形だけじゃなく、人間としても魅力的ですよね。

―それが、エネルギーの正体なんですかね。エネルギーを発する側を目指したいです。

植島:外見的な美しさって今はあんまり差がなくなってきているんですよ。
化粧も上手くなってきているし。

―なんでモテるんだろうっていう人は、みんな大体エネルギーがある人な気がしてきました。

植島:若い男性たちは、美醜関係なくなおさらそういう人に惹かれているかもね。
僕らの世代は、ハリウッド女優が基準だったし、それ以降も、女性誌の表紙はほとんど外人モデルだった。でも、今はそうじゃなくなった。
いまは、昔と比べれば美しさのヒエラルキーはあまりないかもしれない。みんなかわいい。
ちょっと口が大きかったり、鼻が低かったりしても、個性的と言われる時代だしね。
男だけじゃなくて、女も生き方が変わってきたからね。

―すごい勇気が出ますね。女性は特に美醜をすごく気にしている人が多いと思うので。
読者の方にも自信がなくて恋愛をしていない人もいると思うので、ぜひ自分だけの魅力をみがいてほしいと思います。

Text/AM編集部

植島啓司
1947年東京都生まれ。宗教人類学者。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、M・エリアーデらのもとで研究を続ける。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ(人類学)客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。40年以上世界各国で宗教人類学の調査を続けている。

植島啓司 官能小説

『官能教育』
著者:植島啓司
発行:幻冬舎

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