お互いの故郷、習志野で

そして土曜日がやってきた。我々は地元のオッサンだらけの焼き鳥屋へ。

「杉山さん、なんか、この店って『大人』って感じがして入りたかったんですよ」

「ニノミヤさん、私も。高校卒業してからは地元から出ちゃったので、この街の『大人』なところって行く機会なかったですよね」

しばらくすると中学生の間で話題だったラブホテル「X」の話になった。

「みんなXができたとき騒然としていましたよね」

「あそこでエロいことが日夜行われているんだなァ……なんて男はスケベ心丸出しで言っていました」

「この前、山内と田中が手を繋いで入っていくのを見た、とか真偽不明の情報を流す者もいましたね」

「ハハハハハ」

こうして「X」の話題で盛り上がったのだが、この段階では我々の足はカウンターの下で時々当たったりしていた。杉山さんは当たってもそのままにしていた。なんとなく我々の足はその後絡まり、静止。会話は止まる。僕は慌てて追加のビールを頼み、彼女も7杯目の中ジョッキを頼んだ。そして、ダメ元で杉山さんに聞いてみた。

「『X』、行ってみませんか?」

なんというか、思春期に「大人の象徴」として存在した場所に隣の中学に通っていた同級生と行くことは非常にエロい感じがしたのだ。しかも、彼女は取引先の社員だ。間接的な「同僚」と見ることができるのも「秘め事」のようでこれまたエロい。今後同社へ行くときもアイコンタクトで妙な連帯感と「秘め事」感が増すのではないか。

憧れのラブホテル「X」で初セックス

そして21時、ついに憧れの「X」の中へ。「休憩」で4,600円の部屋を選び、二人とも「へー、中はこうなっていたんだ」や「なんか大人になった気分ですね」などと恥ずかしさを除去しつつ、「私たちはあくまでも中学時代の好奇心を満たすために来ただけ」といった言い訳風の言葉を口にした。

部屋に入ると抱き合ってディープキスを2分ほどした。そこからまずは僕がシャワーを浴び、続いて彼女が浴びた。ベッドで待っていると胸の下をバスタオルで覆った彼女が寄ってきた。僕は脚を伸ばし、その上に彼女を座らせ、再びディープキスに。完全に勃起しており、彼女の性器周辺にアソコは当たってしまう。

「ギンギンですね」

と彼女は言い、ここからセックス開始。彼女は細かったけど、Cカップだという形のいい胸は張りがあり、目の前にあるとますます興奮してくる。フェラチオも上手でカリの部分をくわえてなめられるのが気持ちよかった。そして僕も彼女のアソコをなめはじめると、ものすごく彼女は濡れてきて「今入れて……」と喘ぐ。

そこで我々は「合体」したのだが、尋常ではない濡れ方である。これまでにそこそこの人数と経験してきたが、ここまで濡れている女性は初めてだ。腰の動きを早めていき、恐らく8分ほど経った頃か、「出る、出る!」と彼女が叫ぶと突然猛烈な量の液体が飛び出した。僕の下腹部はこの液体でビショビショになった。その液体はその後数秒間にわたって出つづけ、シーツもビチャビチャになった。

いわゆる「潮」というものだが、これに動じてはならない。何しろまだ自分も彼女も果てていないのだから。そこから体位を何度か入れ替え、我々は一回目の性交を終えた。

「ごめんなさいね。ビチャビチャでしょ? 驚きました?」

「初めて経験したので少しびっくりしたけど、気持ちよかったですよ」

どうやら彼女によると「潮」は出るときと出ないときがあるようで、必ずしもイったときに出るわけではないそうだ。男の思い込みでは「気持ちが良すぎると潮を吹く」というものがあるが、彼女にはそれは当てはまらなかった。

そして、「潮」の正体については「尿」「愛液」「その他の液体」説があるが、恐らくは「その他の液体」ではないだろうか。何しろ無色透明でニオイもなく、粘り気がない。ビールをたくさん飲んで色が薄まった尿なのかも、と思ったが、その後あまりビールを飲んでいない状態で彼女とセックスをしたときも潮は出てきた。

さて、この初体験の日は「X」から出ると2人で手を繋ぎながら歩いて彼女の家の方へ。彼女が通っていた中学の前でしばらく雑談をし、そこで別れた。翌週、彼女の会社に行ったら予想通り「秘め事」をした者のみができるあの笑顔をお互いすることができたのだ。「ニノミヤさん、楽しそうですね。どうしたんですか?」と打ち合わせ相手からは言われ、打ち合わせが終わると再び彼女と謎のアイコンタクトをして僕は会社を出たものだ。

Text/中川淳一郎