アンダーヘアから「よい性器」を見極める方法

春画―ル所蔵

では、アンダーヘアから「よい性器」を見極める方法も読んでみよう。

《てごとの巻》にはこのように書かれている。
箇条書きにすると……

・陰毛の上のほうに柔らかく、ちぢみ上がっている毛が少し生えているのが良い

・ふさふさと陰毛が多く、左右下にまで生え下がっているのは良くない

・かわらけ(毛がまったく生えてこない)は一種の風味があるもので多くは淫ら

江戸期の色道指南書のほとんどは男性向けに記述されており、これらの本を読み信じていたら……。 そういえば、「毛が多いと遊んでいる」「乳首が黒いと遊んでいる」と10代のころにふざけて話しているクラスメイトがいたことをふと思い出した。

江戸時代のアンダーヘアの整え方

《逢夜雁之声(おおよがりのこえ)》1822年 歌川豊国

ここまで読んで「むかしは毛は生やしっぱなしでナチュラルで解放的かと思ってたいたのに、こんな本があるなんて意外だったわ」と思った方もいると思うのだが、江戸期のアンダーヘア処理方法は思った以上に多く存在した。

中野栄三氏の『遊女の生活』に江戸期のアンダーヘアの整え方がまとめられている。

【擦除法】塩みがき・灰汁みがき・糠みがき

【抜除法】元結でゆわえる・貝殻でこすり抜く・毛抜き

【焼除法】紙燭(しそく)・線香等で焼く

【剃除法】剃刀・湯屋の石で擦切る

《逢夜雁之声(おおよがりのこえ)》1822年 歌川豊国

遊女は日々多くの客と交わるため、毛の摩擦による傷や衛生面の観点から毛を整えるのは必須だったようだ。剃刀などの刃物で切ると毛先がするどくなるので、客に不快感を与えないように毛抜きを使用したり線香で燃やし整えていたようだ。

しかしながら町の女性たちは全く毛を整えなかったかというと、具体的な記録がないものの、湯屋で毛切り石を使用するという川柳は残っており、生活面でストレスを感じない程度には整えていたようだ。

昔読んで印象深かった小噺がある。夫婦の営みのときに毎回妻さんの毛が挿入時にからんで妻さんが痛そうだと夫さんが知り合いに相談したら、貝殻の背をすり合わせて毛を切る方法を教えてもらった。帰宅して暖かい昼下がりに、夫さんは縁側で妻さんの毛を切ってあげた。ポカポカと気持ち良く、妻さんはそのまま脚を広げて昼寝をしてしまったという。その光景を想像すると、貝殻のコツコツとした小さい音と、暖かい縁側の心地よさが脳裏に浮かび、とても微笑ましくなる。

そんな表では語られない“オシモ事情”の歴史でした。

Text/春画―ル