高齢処女…でも求めるのは普通のプレイじゃない

大泉りか 官能小説
ゆっくり 破って』/深志美由紀著/イースト・プレス刊


 悔しいが、私は正直に言えば処女だ。本当のところ、まともに男女交際をしたことはほとんどない。

 理由は自分でもよく分からない。容姿が他人より特別劣っているとか、そういうことではないと思う。社会に出てから、上司や取引先のおじさまがたから熱烈に誘われることは何度かあった。自分から見て恋愛対象だな、と思えるような同年代の男性からは一向にアプローチされないのだ。(中略)

 まともな独身男性は、会社に何をしに来ているのか分からないような頭が緩くて可愛らしい女の子たちがどんどん射止めていってしまった。
このタイプの新入社員は毎年一定数いて、最初は彼女たちの使えなさに苛々したものだが、本人たちはさっさと結婚して辞めるつもりなのだから仕事を覚えるよりお洒落に力を入れたほうが理に適っている。バカだバカだと思っていたが、実は私などより相当に賢いのかもしれない。焦っているわけではない――と、自分では思う。
(『ゆっくり 破って』P10L1-P11L4)

 ヒロインは三十路処女の理津子。いやいやいや、焦ろよ!!! 
いや、しかし、2010年に行われた厚生労働省の「第14回 出生動向基本調査」によると、なんと、30代未婚女性のうち23.8パーセントが性体験の経験なしと答えている結果が。現代の30代未婚女性の4人に1人が処女であることを考えれば「焦っているわけではない」と理津子が考えるのも無理はない話。が、理津子には自らを処女たらしめている、もうひとつの心当たりがありました。それは何かというと……。

 それがどこにあったか、どうして見つけたかは覚えていない。
私は両親の部屋で見つけたテープを片端から再生していた。大抵は、大人向けの洋画が録画されていた。(中略)

 あれはその中の一本だったと思う。
再生ボタンを押した。数十秒の真っ暗な暗転から、突然ぱっと映像が映し出された。
劣化してざらついた、ノイズ混じりの画面。どこかの部屋のベッドの上、美しい少女がそこへ横たえられている。

 少女は全身を麻縄で縛られていた。まるで人形のような美しい裸体。艶めいたぬばたまの黒髪。
その肉体に赤い蝋燭を垂らし、鞭を打つ男。(『ゆっくり 破って』P13L6-P13L16)

 幼い頃に発見した父親所蔵のSMビデオ。
高校で教師を勤める厳格な父親の変態性癖にショックを受けつつも、それがきっかけとなって理津子は性に目覚め、そのビデオを思い出しては自慰に耽るようになります。そして、成長したその後も、その時に受けた衝撃を忘れることはできませんでした。

 私がいわゆるごく普通の恋愛に興味が持てないまま大人になってしまったのは、そのせいなのかもしれない。
街角でナンパしてくる軽薄そうな男の子やたまに参加する合コンで向かいに座る真面目そうな男子学生に、私はまったく魅力を感じなかった。

 その世界に足を踏み入れる勇気もない。かといってそれを抜きには性欲は満たされない。 結果、ごく普通の男女交際の経験すらないまま、この歳になってしまった。 (『ゆっくり 破って』P15L9-P15L13)

 性を『後ろ暗く疚しいもの』として捉えてしまったゆえに、試すこともできず、また、普通の男性では満足できる気もしない。こうして立派な高齢処女へと成長した理津子でしたが……。

【後編につづく】

Text/大泉りか


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