人妻になった同級生に妄想が広がる主人公
この物語の主人公はフリーライターの飯島慎吾。
「小説家としてデビューし、成功するまでは帰郷しない」と心に決めていた慎吾でしたが、三十歳になったのをきっかけに、ふと弱気になります。
『いつまでも夢を追っている年じゃない』。
これからの生活に不安を抱き、故郷を出て以来、初めて望郷の念を抱いているこのタイミングで、高校の同窓会の知らせが届くとともに、かつて憧れ、三年間片思いをしていた学級委員長の白川紗希も参加するという事実を、かつての親友・雄治から知らされます。
ずっと彼女のことが好きだった。高校を卒業して上京してからも、頭の片隅には紗希の姿がチラついていた。当時の恋人には悪いと思ったが、紗希を思い出すことがよくあった。
いつも遠くから眺めているだけで、告白どころかほとんど言葉を交わしたこともない。どこか澄ました感じの紗希は高嶺の花といった雰囲気で、ラグビーに熱中して毎日汗だくになっていた慎吾とはまるで接点がなかった。
天使のように可憐だった彼女も、今では人妻になっている。(中略)
(でも、あの頃よりさらに……)
美貌に磨きがかかっているのは、旦那に愛されている証拠だろうか。
清楚で堅いイメージはそのままに、女性らしい柔らかさを身に着けている。透明感溢れる少女だった紗希は、エレガントな人妻になっていた。(『熟れどき同窓会』P14L7-P15L4)
片思いの相手だった紗希との再会。
しかし人妻ということで、どうしても頭に浮かぶのは夫の存在です。
きっと夜のベッドで旦那に可愛がられているに違いない。高校時代の清楚なイメージからは考えられないが、すでに数え切れないほど抱かれているのだ。真面目だった紗希が夜の閨房でどんな反応をするのか、つい想像してしまう。
声を出すのは恥ずかしくて、ペニスを挿入されても健気に下唇を噛んでいるのだろうか。
いや、元学級委員長とはいえ、ベッドの中でも優等生とは限らない。意外と大胆に腰を振りまくって快感を貪っているのではないだろうか。 なにしろ、三十路を迎えて肉体は熟しているのだから……。
(『熟れどき同窓会』P15L8-P15L14)
ついそんな邪な妄想をもやもやと抱いてしまう慎吾でしたが、ラグビー部のマネージャーであり、明るく元気だった遥香や、気が強く不良っぽいけれど、整った顔立ちをしているクラスメイトの麻奈美といった女性たちともまた、再会を遂げます。 美しく成長を遂げたかつてのクラスメイトたちに胸をときめかす一方で、わずかに落ち込みをも感じる慎吾。
地に足をつけた生活を送り、幸せそうな同窓生に比べて「俺はなにをやっているんだろう」と……。
ええ、ええ、わかりますとも、この気持ち。わたしが同窓会で再会した元彼もすでに既婚者、しかも、14歳の子持ちだったのですから。
次回は後編をお届けします。
Text/大泉りか
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