同級生との再会で花開く官能の世界『熟れどき同窓会』(前編)

第11回:葉月奏太・著『熟れどき同窓会』(前編)

大泉りか 官能小説 Lies Thru a Lens

 同窓会というものと、なぜか縁遠い人生を送ってきました。

 大学卒業と同時に地元を離れ、都心近くで一人暮らしを始めたこともあるかもしれません。 が、いくら地元を出たといっても、わたしの実家は都内。
池袋から西武線でわずか三十分ほどで帰郷できる、むしろ『帰郷』という言葉を使うのは、大げさすぎるほどの近距離にあるのです。

 なのに、なぜ同窓会に呼ばれないのか。
中学時代のわたしの親友は呼ばれているというのに……となると、結論としてはひとつ。

「嫌われてる」。

 この一言に尽きると思うのですが、けど、わたしそんなに学生時代、嫌われてたかなぁ。
心当りはないけれど……あぁ、でも、もしかしてそんな気もする。

 あれは中学二年の秋のことでした。クラスの中心的人物だった男子に「付き合ってよ」と言われたのです。
まるで兆候などなかった、いきなりの告白に「わたしのこと好きだったの?」と問いただしたところ、返ってきた言葉は「いや、ヤラせてくれそうだから」

 当時はまだ処女であったし、初めては好きな人に捧げたい、というピュアピュアしい願いを持っておりました。
確かにその頃から、将来、官能作家になるくらいのスケベさも持っていましたが、けれど「ヤラせてくれそうだから」と告白をしてくるような軽薄な男になどバージンを捧げたくはない。

 というわけで、お断りしたら、翌日からクラス中にハブにされたのでした。
でも、これわたし、ちっとも悪くないと思うんですけどね。
「ヤラせてくれそう」と思わせたわたしにも、多少は問題があったとはいえ、クラス中を巻き込んでシカトする男とか、本当にくだらなさすぎる!

 よくよく考えてみれば、同窓会に行っても、来ているのはそうやってわたしをシカトしてくれた同窓生たちなわけで。
もちろん仲の良くしてくれた子もいなかったわけじゃないけど、もう二十年も会ってないのだから『今のわたし』について説明するのがこれまた面倒くさい。

 が、三十歳を過ぎたところで、突然、本当に突然に同窓会に誘われました。
せっかく誘ってくれるのなら行ってみようかな……と参加することにしました。というか、正直嬉しかったです。
シカトの罪も全部洗い流してやろうと思ったし、なんなら取材で知った芸能界の裏ネタ話だってしゃべってやるぜという意気ごみで、西武線に揺られて初めての同窓会へと向かったのです。

 会場は駅前の居酒屋でした。わたしがソープ嬢になったと噂されていたとか(風俗誌にインタビューが掲載されていたのを目撃され、それが間違って伝わったらしい)、わざわざ刺繍入りの白ジャージで訪れるヤンキーにうんざりしたりとか、二次会がカラオケボックスでうるさくて話があんまりできなかったりとか。
まぁいろいろと微妙なこともあったけれど、一番胸が弾んだ出来事いえば、中学時代にお付き合いし、Bまでした彼と再会したことでした。

 というわけで、今回ご紹介するのは、葉月奏太氏の著書熟れどき同窓会(竹書房ロマンス文庫)です。