『むつごと秘宝館』小玉ニ三・著 秘宝館での淫靡な体験
ひょんなきっかけで秘宝島と呼ばれる廃れた観光島を訪れることとなった鰻養殖場の営業マン、園浦礼太郎。
そこで廃館となった秘宝館を目にする。ひとめで陳列されている人形たちの虜となった礼太郎は、その館のオーナーの娘であり、人形そっくりの美貌を持つ姫路沙織に修復を申し出る。やがて修復が終わると人形たちが動き出し――。
あるブースの中では、乙姫は浦島太郎であろう逞しい老人から立ったまま、背後から挿入されて身悶えている。電気が通っているので、その人形たちは動いている。太郎の腰が延々と前後に動き続け、乙姫の尻の割れ目からパックリと覗いた実にリアルな女性性器の中に、これまた立派なペニスを出し入れしている。 乙姫の、たまらなさそうにしかめた顔が、実に生々しい。電気が通り、実際に女陰を貫かれている状況で見ると、またいちだんを胸に迫ってくるものがある。(中略)
繁華街の風俗店を思わせる、いかがわしいような、だからこそ好奇心をそそられる派手派手しさ。人形だって、改めて見れば、昭和のデパートのショーウィンドウに飾られていたマネキン人形風だ。館内の展示物のディスプレイは、雑然としていた。
しかし、だからこそ、創設者の姫路忠の情熱が、館内のどこを見渡しても感じられた。廃館時でさえそうだったのだから、電気の通った今はなおさらだ。忠の秘宝館への思い、そして性への執念のような熱気が、ここには満ちている。
人形たちは、一人でいる礼太郎を尻目に、せっせと行為に励んでいる。礼太郎はなんだか取り残されたような気になってくる。人形相手に何を馬鹿なと思うが、ほんとうに独り身が辛く感じられてしまうのだ。
対となる相手が欲しくなる。ここは、そんな場所だった。 (『むつごと秘宝館』P251L5-P253L16)
昭和のエロ遺産、秘宝館。もしも貴女が少しでも興味を持ったならば、ぜひ、一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
チープなエロ人形館を作ろうと思い立った先人の気持ちに思いを馳せるのもよし、バカくさいシモコントに初笑いするもよし。
もしかしたらわたしたちが「秘宝館を観たことがある」最後の世代になるかもしれません。
Text/大泉りか
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