古代インド発祥の性の経典『カーマスートラ』Vol.1

 はじめまして、私はセックスに関することなら何でも知っていて、かつ今でも研究の努力をやめないジョージ博士だ。 このコラムでは、セックスにまつわる世界の文化を、各国古今にわたる歴史的文献や事象とともにジャンジャカ紹介していくぞ。
 まず、そもそもセックスとは一体何なのか。
ある時は男女の絆を深め、またある時は人間を狂わせ世の中の歴史さえも変えてしまう、それがセックスじゃ。
快感が生じることはもちろん、恋愛感情、その他諸々の深い感情と密接に関係することで、セックスの存在感は人間にとって計り知れないものとなっているのだ。
 セックスとは我々にとって、生殖以外に一体何をもたらすのか。
単なる「喜び」なのか、それとも「恥ずべきこと」なのか?
そんな人類には欠かすことができないセックスについて、わしと一緒に解き明かしていこう。
 まず、第一回目のテーマは”古代インド”じゃ。 現在でも結婚するまでは純白を守ることがスタンダードなインド。しかし古代インドでは、今とは一風違ったセックス観があったようだぞ。

古代インド 性愛は人生の三大目的のひとつである!?

 前述のとおり、インドでは社会通念上、まだ婚前交渉は良しとされていないのだ。つまり、定義上では、29歳以下の人口が6割のインドでは街中に処女・童貞があふれているということになる。これには日本人もビックリ! じゃな。
 しかし、なんと4~5世紀の古代インドでは、性愛(カーマ)は、聖法(ダルマ)と実利(アルタ)と共に人生の三大目的とされていたそうなんだよ!
 その性愛に関する研究の重要性を説いている貴重な文献が、かの有名な性愛教典「カーマ・スートラ」じゃ。これが記された時代は、1~6世紀の間とはっきりしていないが、ヴァーツヤーヤナ という人物により、7部35章にわたって、性に関する深い研究が記述されているのだ。
 みんなが一番読みたがるのは、全10章からなる第2部の「性交について」じゃろう。この第2部には性交の時間、快感の種別、性器の大きさ、口唇による性交、変態性欲など、興味深い項目がズラリと並んでいる。中でも体位に至っては64もの数が紹介されていて、江戸から伝わる48手で有名な日本ですら負けてしまうほどなんじゃ・・・。
 そして、「カーマスートラ」は一見男性を対象としているように見えて、明らかに女性向けのアドバイスも多い点は大変興味深い。性生活では女性も主体的であるべきで、受身の存在ではない、ということを主張しているのだ。
それをあらわすものとして、性交時にすべきことが男女ともに細かく挙げられており、たとえば男性なら、摩擦はもちろん圧迫(性器を押し付ける)・一撃(ある程度引き離したあと強く挿入する)、女性であれば、鉗子(膣でペニスを締め付ける )、独楽 (性交中に腰を回転させる )となっている。これさえ読んでいれば、女としてマグロはいけないことなんだ、ということが自然に体得できるはずじゃぞ。

性愛を極めたいのなら過程を大事にしなさい byカーマスートラ

 このように「性愛」自体の技術や体位に関する記述の印象が大変強いカーマスートラだが、実は重きを置いているのが「男女の駆け引き」なのだ。
中には女性を得る方法として、下記のような現代の「モテ本」にも通じる記載もあったりとバラエティ豊かだぞ。
・彼女の足に自分の足を押しつける。
・親族の集まりで、彼女の隣に座り、口実をもうけて彼女に触れる。
・水遊びの際、遠くで水に潜って、彼女のすぐ近くで浮かび上がる。
 

 その他にも人妻をうまく口説く方法、女性向けには、妻または娼婦としての男性の扱い方などセックス以外のことも多く記述されている。つまり、「カーマスートラ」が伝えたいことは、セックスの直接的な快感以外にも、そこに至るまでの道筋こそがさらに人生をより深く豊かなものにしてくれるということなんじゃよ。これは現代でも十分通用するし、むしろ昔に比べ、簡単にセックスする様になってしまった先進国の我々こそが学ぶべき考え方であるぞ。

現代のインドの実情

 そんな、恋愛・セックスに関して全世界に通じるような教典を生み出したインドだが、現代は親がリードするお見合い結婚が主流で、恋愛結婚は少ない。
 しかし、近頃では親の目を逃れて恋愛の楽しみにふける若者も増えてきたんだそうだ。確かに、ここまでインターネットが発達し、他国の情報が次々に入る状態であれば、自由恋愛や婚前交渉が今よりももっと広まるのも時間の問題かもしれんな。ただ、闇雲な情報を仕入れてお互いあまり楽しめないDVDのようなセックスをしてしまうよりかは、カーマ・スートラのような由緒ある正しい性の教典で学ぶ方がよりよいセックのためにはベストじゃぞ。人生を楽しむためには何事も教養が必要、ということを教えてくれるような古代インドのセックス観であったな。

【古代ギリシャ編につづく】

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