江戸の遊郭・吉原の名産品
江戸時代に存在した吉原は、浅草の北側に位置する遊廓だった。
この遊廓の中には遊女屋をはじめ様々な店があり、華やかに繁栄した吉原遊廓は観光名所のひとつとしていくつかの名物品も売られていた。
『吉原大全』の吉原名産について読むと
巻せんべいは此里第一名高き名物なり、江戸町二丁目角、蔦屋太郎兵衛工夫しはじむ。
今の竹村伊勢方なり。近頃 「最中の月」といふ菓子をも製し出す。
あげや町山や市右衛門 製する豆腐、いたつて極品なり。
世に是を「山や豆腐」とて賞かんす。
甘露梅(かんろばい)は松屋庄兵衛 手製しはじむ。昆布巻は近江や權兵衛製しだす。
漬菜(つけな)は、すさきや久兵衛製しはじむ。此 三品、中の町の名品として、今は
一同に茶やよりの配り物となりぬ。
巻きせんべい、豆腐、昆布巻など吉原には様々な名品があり、いくつかは配り物として喜ばれるほど有名だったようだ。
この中に登場する巻せんべいで有名だった竹村伊勢は「最中の月(もなかのつき)」という名前の菓子を売り出し、その菓子も大評判だった。
実はわたし、春画―ルは最中(もなか)が好きで、銀座にある某老舗の予約しないと買えない人気の最中を毎月予約し、代々木公園のベンチで昼間からひとりで10個たいらげたこともあるほど最中が好き。
「江戸吉原の名物の最中を食べてみたい!」そんな気持ちから文献を調査し、吉原の遊廓で売られていた「最中の月」を再現することにした。
「最中の月(もなかのつき)」の材料は?つくり方は?
いくつかの文献を調べると、共通する「最中の月」の特徴は「もち米粉を水で練り、蒸して薄くのばして丸く切って焼いた菓子」ということであった。
また『江戸名物詩初編』の竹村最中月について読むと、「最中の月」の見た目は白色で贈答品としても重宝されていたようだ。
「もち米粉を水でこねて蒸して薄く焼くなら楽勝じゃん!」と図書館でニヤニヤしながら勝利のガッツポーズをした私は、このときはまだ餅米粉に遊ばれるなんて予想だにしなかった……。