現代では生理期間を心地よく過ごせるような製品が続々と発売され、生理に関する考え方も数十年前と比べてずいぶんと良くなってきたと感じる。これは予兆もなくいきなり時代が変わったのではなく、少しずつ誰かが違和感や改善点を声に出し、行動を続けてくれたからだ。
過去に存在した価値観含め文化や風習を知ることは、現在自分が持っている考え方の視野をより広げ、より良い未来をつくるために必要なことだと私は考えている。ということで、今回は当時使用されていた江戸期の生理用品「御馬の折り方」を再現し、実際に使用感もレポートしてみた。
「過去の過ぎ去った生理の文化」としてではなく、現在は過去と地続きであることを考えながら読んでいただきたい。
およそ200年前の生理に関する情報は現在と異なるのか?
文政5年(1822年)から出版がはじまった渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫》は、中国からの医書や性書などの様々な書物をもとに書かれた性典物であり、現在見てもその探求心や読者に多く読んでもらうための数々の工夫に驚くばかりである。内容は男性向けと女性向けが混ざっているため幅広い層に読まれたのではないかと思う。そしてこの本は「生理」についてこう説明している。
生理は個人差で三日ほどで終わることもあるし、四・五日の場合もあるが、最長でも七日程度である。毎月悪い血(排出される経血)が出るのであるが、七日で終わった翌日の八日目から妊娠する時期になる。奇数日に受胎すれば男児、偶数日には女児である。
生理中の女性は口の周りが黄色っぽくなるものである。生理期間が終了しても赤黄色のおりものが出てくるが、これは経血ではなく陽海の時期である。
生理期間七日間が終了すると、その後の五日間は妊娠する時期である。
生理期間終了から六日後には赤黄色のおりものは出なくなるが、これは開いていた子宮が塞がるためであり、この期間に入ると妊娠はしない。
世の中には子供を授かりたい人、既に授かったから避妊をしたい人など事情は様々である。いずれもこの方法を行うべし。子供を授かりたい人は自分の生理の日を把握し、これらの方法を実践するべし。懐妊することはまるで草木が実を結ぶようなことである。極めて有効な方法である。
原文では「生理」のことを「経水(けいすい)」「月経(げっけい)」「月水(つきやく)」などの語で説明している。当時は生理期間が終了すると、その後の五日間は子宮が開くため妊娠しやすい「陽海」の期間であり、その期間を過ぎると子宮が塞がるため妊娠しないと考えていたようだ。現代から見ると誤りな部分もあれば、近からず遠からずな情報もある。
また、当時は生理の不順は病を招く可能性があり良くないことだと考えられていたので、その対処として、生姜と煎じて飲む「千金調經湯(せんきんちょうけいとう)」という漢方も紹介されている。
わたし自身、生理不順について悩んだ経験があることも、このコラムでテーマにしたかった理由のひとつである。
当時の月経観では生理を不浄のものと考えオープンな話題ではなかったと考えると、上記のような生理不順の漢方レシピがセックスの心得やハウツー、妊娠についての情報とともに記載されていることに感心してしまった。 この本は当時何版も摺られたベストセラー本であった。