なぜ今「春画」なのか

春画 鈴木春信《風流艶色真似ゑもん(ふうりゅうえんしょくまねえもん》

いま、ゆっくりと、性の意識が変わりつつある気がする。
「春画があった江戸時代は性に対しておおらかだったのですね」
なんてよく言われる。
でもそう感じるのは、今の状態にしんどさを感じているからではないかとわたしは毎回思う。
長い年月をかけて、この国は「他の先進国と同水準の道徳心を身につけている国」になるために、今まであった「あたりまえの性の光景」を隠していき、性に関する意識を変えていったからだ。

それは責めるべき事実ではない。その時には必要なことだったから。
しかし、「性は人間がもつ当たり前のもの」という意識へ変化の境目にあるいま、性に対するうしろめたさがなかった頃のシンプルな「性のいとなみ」を見て手放しに癒されたり、笑ったりしてほしい。性の本質をみていく着火剤にしてほしい。
「性」は複雑なようでいて、シンプルなのだ。

床の体位「茶臼」のやり方教えます!

春画 北尾重政《閨花鳥襷(けいかとりだすき)》

そして、この連載について。春画の中には性のハウツー本もあるので、次回以降のコラムでは「オトコにちゅうしてもらう方法」なども紹介していく予定だ。
第一回目の今回は、「茶臼(ちゃうす)」。つまり女性が上に乗る体位を紹介するよ。

春画 「陰陽淫蕩の巻(いんようてごとのまき)」

この本「陰陽淫蕩の巻(いんようてごとのまき)」は、パートナーを喜ばせるための心得から、えっちの体位などの実践編まで記されている性の指南書。日本人の性の探求心はすごい。

挿絵は葛飾北斎。意外かもしれないが、春画を描いていたのは春画専門の絵師ではなく、歌川国貞や喜多川歌麿などの有名な絵師も手掛けていたのだ。
掲載されている「茶臼」の方法を読んで見ると、

「オンナは上にのると、カレのマラを自分のおまたに当てる。
それから自分のひじを彼の肩につけて彼の首に抱き着くこと。
自分の体はカレの胸にあずけ、お腹もぴたっと押し付けて静かに大きくおしりを動かすこと。自分の膣で彼のマラをしっかり咥えること。」

とある。自分の心臓とカレの心臓がひとつになるくらいピタっと胸をくっつけるのがポイントなんですね。
そして静かに、情熱的に腰を動かせる。絶対に幸せな時間ですよね。
茶臼をマスターしたらこんな変わり種も……

春画 喜多川歌麿《絵本笑上戸(えほんわらいじょうご)》

これは「曲茶臼」と呼ばれる体位であり、三味線が弾ける芸者や遊女だからこそできる技。
「上も下も、芸者は大変だわぁ」なんて書き込みが絵にあるので、当時何百人のオンナたちが三味線を弾き歌いながら客の上で上下したのかと回想するのも一興。

ちなみに余談ですが、以前Amazonプライムで「愛のコリーダ」を観たときにこの体位が登場したときは感動した。藤竜也さんが発狂するくらいセクシーなので、春画とあわせて是非参考に見て欲しいです。

Text/春画―ル