強気なお嬢様とひたすら尽くす使用人、誘ったのはどっち?「オカズになる文学」

ペンを片手に窓辺で本を開いている女性の画像
by luxstorm

 今週は「オカズ」の話を書きたいと思います。と言っても、ハンバーグだとか玉子焼きだとか、そっちのオカズではありません。オナニーにおけるオカズのほうです。現代はインターネット社会ですから、無料で閲覧できるアダルト動画をオカズにしている人が多いかと存じます。ネット動画という、文明の利器をフル活用したオナニーもけっこうですが、今回はあえて、時代の流れに逆らったオカズをご提案しますね。

ご提案その1:春琴抄オナニー

 谷崎潤一郎の代表作の1つです。三味線が得意な盲目のお嬢様・春琴と、使用人の佐助の物語。佐助は、春琴の衣食住の世話だけでなく、三味線の弟子にもなるのですが、度を越えた厳しすぎる稽古が続くわけです。どう見ても男女関係があるとは夢にも思えない2人ですが、やがて春琴は妊娠し、佐助にそっくりな赤ん坊を出産。春琴の両親は、夫婦になる選択肢を提案しますが、春琴は佐助の子であるということを否定し、あくまでもお嬢様と使用人の関係性を貫きます。佐助も、使用人としての立場に徹し続けていくわけです。

 筆者が『春琴抄』を初めて読んだのは確か高校生のときだったのですが、そりゃもう興奮しましたよ。強気なお嬢様と、ひたすら尽くす立場の使用人……先に誘ったのはどっちだ、と! 普通に考えたら春琴のほうでしょうね。一般的なセックスは、男性から誘うのが王道ですが、佐助は使用人の立場ですから。では春琴から誘ったと仮定しましょう。彼女は強気な性格ですから、使用人なんぞに「求める」のはプライドが許さないのは火を見るよりも明らか! では果たしてどんな誘い方をしたのだろうと、想像を掻き立てられます。

『春琴抄』は、オカズとしてもサイコーなだけでなく、佐助の恋愛観も参考になりますよ。少し前に「プロ彼女」という言葉が流行りましたが、佐助は「プロ彼氏」といえるでしょう。春琴からのセックスの誘いも、きっと彼女に恥を欠かせないよう配慮して応じたでしょうし、その後も彼氏面することなく、使用人として仕え続けたのですから。
損な役回りに見えるかもしれませんが、佐助のようにひたすら尽くすことで、尽くされる側は、「こんなにも尽くしてくれる異性は、ほかにいない!」と、離れられなくなるわけです。一見、尽くされる側が尽くす側を束縛しているかにも見えますが、実はその逆というわけ。『春琴抄』の場合は、尽くす側が男性で、尽くされる側が女性ですが、男女反対パターンにも応用できるかと。惚れたオトコにとことん尽くすことで、佐助のように、尽くした相手を離れられない状態にすることも大いに可能! 「プロ彼女」ならぬ「佐助女子」ってことで。