「色々試してみようよ」四十八手を途中で諦めたのは合理的判断だった/中川淳一郎

体位には「四十八手」というものがある。元ネタは相撲の四十八手だが、これを「足からみ」や「小股はさみ」などとして夜の技に応用したのである。さすがにこれは言葉からもよく分からないため、現在は「正常位」「騎乗位」「後背位」「座位」などと分かりやすくしている。さらには「バック」「立ちバック」やら「駅弁ファック」などという呼び方もある。

「マンネリ化するから」などという理由で様々な体位を試すよう提言するエロサイトやエロ専門家もいるが、必ずしもそれは必要ではない。何しろ、二人がもっとも心地よく、キツくない体位が良いに決まっているのだ。アクロバティックな体位は抜けてしまったり、どちらかに過度な疲労をかけさせることになる。

それこそ「駅弁」など、屈強な男性でなければ1分で疲れ果ててしまうだろうし、女性の側も落とされてケガでもしないか心配になることだろう。だから、初回のエロの時に試したものの中から厳選された3~4体位でその後は続ける、ということでもいいのだ。

四十八手すべてを試そうとした良子さん

随分と若い頃に出会った良子さんは、僕と同じ年だったが、まだ経験は浅かった。だから色々と試してみたいと言ったのだが、その日、雑誌の記事か何かに登場した四十八手のスクラップを持ってきた。

「ニノミヤ君、色々試してみようよ」と言い、僕らは四十八手すべてを試そうとした。だが、挿入したまま流れで全部をするというわけにもいかず、適宜結合を解いてから、図を読んでああでもない、こうでもない、とやるものだからロマンもへったくれもない。

しかも、外に出ている時間が増えたため、途中で萎えてしまい、復活まで20分ほどを要すなどまったく楽しくないため、15手ぐらいで諦め、以後、良子さんとは3つか4つの体位だけを駆使し、何度かセックスをした。

大体、膣の浅い部分の横壁にぶつかるような体位が気持ち良いのか、という問題がある。そういった意味で、僕らが途中で諦めたのは合理的判断だったし、その後数度会った時のセックスは満足感が高かった。

その後、恐らく良子さんはあのスクラップを使用することはなかっただろう。そして、同じようにスクラップを持ってきた男がいた場合、「あ、それはあんまり試さないでいいと思うけど……」などとやんわり断れたのだと思う。

体位の「攻守」を変えること

体位の変更については、「攻守」がある場合、それを交互にするのが良いだろう。というのも、正常位だったら男が、騎乗位だったら女が体力を使う。そのため、休憩の意味合いも込めて攻守を入れ替え続けるのが良いとの結論に至った。

体位の中には「仏壇返し」というものがある。いわゆる立ちバックは女性が壁に両手をつけたり、ベッドやテーブルに手を乗せて行うが、これは女性が床に両手をつけるバックのことである。女性の負担が大きいため、本音としては「普通のバックにしてよ」と思うところだろう。