先日、ちょっとご縁がありましてアダルトグッズを作っている工場を見学させていただきました。その前に本社の事務所で、取り扱い製品のカタログを見せていただいたのですが、ページをめくったときに「おおっ!」と思ったのは、そこにおびただしい数の多種多様なバイブレーターが掲載されていたからです。
向こうが透けて見える涼しげなもの、グロテスクと言ってもいい血管が這いまわっているもの、亀頭部分がこぶのように膨らんだもの、真っ黒でどでかいもの、根元に粒だった突起がついているもの、短いけどド太いもの、長くてまっすぐなもの……無機物なのにやたらと生々しいバイブレーターたち。それぞれ個性的な姿に圧巻の思いで思わずため息を漏らしてしまったのは、そういった、いわゆる女性向けにシンプルかつスタイリッシュにデザインされたものではないバイブレーターを目にしたのは、ひさかたぶりだったからです。
わたしが所有しているバイブレーターは…
というのも、いまわたしが所有しているバイブレーターは、オトナのオモチャと呼ぶのではなく、セルフプレジャーと称するのが相応しい、オシャレな色使いのミニマムで洗練されたデザインのものばかり。うっかり5歳の息子に見つかっても「なにこれ、オチンチンじゃん~!」と、ならなさそうなのが安心だし、もしも夫に見つかったとて「フ・ェ・ム・テ・ッ・ク!」と胸を張って言える代物ゆえ、所有するハードルが低い。
もちろんルックスだけではなく機能も非常に優れていて、外見も中身も最高なイケメン。ゆえに、手放すことは考えられませんが、たまたま今回、古式ゆかしき男根をいささか過剰にデフォルメした、いかにもヌメヌメッとした質感のそれらを目にした際に思ったのです。「ド、ドスケベじゃん!」と。
かつて、わたしがまだ若かった頃。初めてのバイブレーターを使ったキッカケは、彼氏が「これ、使ってみない?」と提案してきて……という女性が、少なくありませんでした。わたしも然りです。バイブレーターは、恋人たちのエッチに刺激を加えるための、まさに“オトナのオモチャ”としての役割を担っていた。もちろんこっそりひっそりと自分のためのバイブレーターをクロゼットの奥に隠している女性もいたことは間違いないけれども、それでも、バイブを所有することは、後ろめたいものだった。
それがいま、「持っていても、決して恥ずかしくない、セルフプレジャー」となったのは、女の性の解放を先導した先人たちのおかげであるし、バイブの普及には女性が抵抗なく買える、オシャレなデザインが欠かせなかったとも思うのだけど、それはさておいて、わたしはどうして、愛着があったはずのオールドタイプバイブをすっかり忘れ去ってしまっていたのか。
- 1
- 2