夫の松岡修造のモノマネが、夫婦ふたりの「生理」を変えた/ながち

カップルや夫婦にとって便利なサービスやガジェットは年々増え、家事分担や予定調整など、ふたりの生活をスムーズにする活用方法も広まってきました。
ただ、急に二人の間に新しいシステムを導入するのも難しい…! この連載では、表に出づらい、二人の問題にそもそもどう向き合って解決したか、までの流れを語っていただきます。

仲良し夫婦の前に立ちはだかる「生理の壁」

2人の問題を2人で向き合っていこうとする夫婦の画像 papagnoc

ながちさんのお話

「毎月、突然話の通じない別人になる。マジで生理って厄介だな」。

夫から毎月言われてきた言葉である。原因は、私のPMSが引き金となる不毛な言い争い、そして発展する夫婦喧嘩だ。最近は少なくなってきたけれど、ゼロにはならない。私だって厄介だと思っている。生理がどんなに女性の体にとって大事なことであろうとも、毎月こんなにヤバイ精神状態になるのは正直迷惑だ。付き合う夫もしんどそうで、申し訳ない。

この原稿を書いている今は、生理2日目。今月は喧嘩がなかったのでほっとしている。でも、まだまだ情緒不安定だ。例えば、ひどい心配性を発動している。数日前に食べた弁当の鶏肉が少し赤かったので食中毒が怖くなり、ずっとカンピロバクターの潜伏期間や症状について調べている。そして、いつも以上に涙腺がバグっている。山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見にあった「魔性の女」のくだりを繰り返し再生しては、毎回初見かのように泣く。そんな自分が嫌になって、ヤケクソになる。心も体もしんどくて仕方がないのになぜか夜中の2時まで新宿で飲んでタクシーで帰ったりした。ギリギリで生きるこの日々は、喉元を過ぎればあっけなく忘れてしまうのに。

夫とは普段、めちゃくちゃに、とっても、とっても愛し合っている。仲良し夫婦としてインタビューされたり、こうやって寄稿したりするほどだ(子どもはいない)。
それでも生理の壁は厚く高い。本当に「今から離婚するか」となるぐらいの夫婦喧嘩もたくさんしてきた。

この記事では、毎月の“厄介”をどうにか乗り越え、ようやく生理と少しだけうまく付き合えるようになってきた私たちについて、書いていきたい。

生理前のあの状態で、情緒不安定を自覚するハードルの高さよ

まず、言い訳がましくなってしまうけれど、私の生理は正社員として働き始めてからひどくなった。夫もよく「付き合いたての頃はそんなんじゃなかった」という。それまでは、知らない間に血が垂れてきて、ああもうそんな時期かとパッドを当て、なんとなく過ぎていくものだった。はっきりと“大人”になってから、「生理前は情緒不安定」だと自覚したのである。

だから最初は、そんな情緒不安定な時期をどう過ごせばいいのか、全然わからなかった。とにかく世界の全てにイライラし、その矛先を夫に向けてしまった。あらゆる生活態度が気に食わない状態である。
夫は「いつもならそんなこと言わないのに」「どうしてそういう風に言うの?」と怒り(当然だ)、ひどい夫婦喧嘩に発展した。毎回別居や離婚を考えた。めちゃくちゃ大好きなのに、生理前はなにもかも嫌になった。そして、たくさん泣いて、たくさん謝ってきた。傷つけてしまうことも、抑えられない自分も、すべてが辛かった。

夫は夫で、生理前の情緒不安定な私を前に、圧倒的な正論をかざした。「生理前だからそんな変なこと言うんじゃないの?」と。

女はわかってくれるかもしれないけれど、生理前に「自分は今生理前だから、もしかして変なことを言っているのでは」と内省するのは簡単じゃないのだ。それどころか当時の私は、「生理前を理由に話を聞いてくれないのはどうかと思う」とつっかかってしまった。

泥沼のドロドロ泥仕合。夫は私を無視したり適当に扱ったりしない優しくて真摯な人間なので、いつも最悪の喧嘩にまで発展してしまうのだった。