学歴こそパワーと信じる父

さて、またしても前置きが長くなりましたが、今回こそ夫が私の実家メンバー(家族という言葉を使いたくないのでこの表現でいきます)と会ったときのことをお話したいと思います。

私が夫(当時は交際相手)に、「実は自分の親が苦手だ」と打ち明けたのは、初めて彼が私の両親に会った日の夜のことでした。

交際の挨拶をするためにわざわざスーツまで着て両親に会ってくれた彼は、会う前から私の両親の大のお気に入りでした。
それは、私の両親(特に父親)が「学歴こそパワー」と信じている種類の人間で、彼が某国立大学の大学院を博士課程まで修了していたからでした。

父は、母ほど私に直接ダメージを与える毒持ちではありませんでした。
しかし基本的に自分の言うことは何一つ間違っていないという考えの持ち主で、父の毒は主に母に向かっていました。母は、父から受けたストレスを「私に父の悪口を聞かせまくる」という形で発散していたので、結果的に私が毒を浴びる形となっていました。
この「母親が娘に父親の悪口を吹き込む」も、毒母あるあるだと思います。あとね、「娘を褒めるときは“さすがママの子”、悪いところをけなすときは“パパに似たのね”って言う」。これ絶対あるあるだと思います。

さらに、先に書いたとおり父は「世の中に金で買えないものは学歴だけ。最悪、家柄は金でなんとかなる」という考え方を絶対的なものとして持っていました。
私はほんの小さいころからその思考を刷り込まれていて、それを当たり前のことと思っていました。「いくらなんでもその考え方は人として薄っぺらすぎるし色んな人を馬鹿にしすぎだろう」と気付いたのは大人になってからのことなので、ずいぶん長い間たぶん私は鼻持ちならない嫌なやつだったと思います。

彼が私の両親と初めて会った日の帰り、私は憔悴しきっていました。
その日は母の機嫌を損ねることはありませんでしたが、私は母から「不機嫌な顔をする」ことを強く禁じられて育ったため、大人になってからも、母の前では常に異様なまでのハイテンションでしゃべりまくるようにしていたので、私にとって親と会うということは、精神と体力の両方がとても消耗するものでした。

普段は、これといってしゃべる必要がなければ黙っている私が両親の前では異様なまでにはしゃいで笑い、その反動のようにぐったりとしているのを見て彼は違和感を覚えたそうです。
「大丈夫?」と声をかけられたら、もう駄目でした。私は、すぐにヒステリーを起こして私を非難する母を嫌いなこと、学歴至上主義な父も嫌いなこと、ついでに弟も気持ち悪くて嫌いなこと、実家メンバーに会うとほぼもれなく体調を崩すことを半泣きで彼に伝えました。

彼は私の話を聞き終わると、「親が嫌いとか、人として反りが会わないなんてことは普通によくある話だと思うし、体調を崩してまで親に会うことはない。年に数回会えば十分だ」と言いました。
そのころ私はしょっちゅう母に呼び出されて実家に行ったり、買い物に行ったりしていたのでそう言ってもらえただけで少し楽になることができました。