股から石油が湧いても
かつての私は「女とは、妻とはこうあるべき」と押しつけられたくないのに、「カマロと結婚すれば生活は安泰だな」と考えていた。
その後、夫と結婚して物書きになって「私は自分で金を稼ぎたい人間で、人の金で生きるのは向いてない」と気づいた。たとえ庭や股から石油が湧いて2兆円をゲットしても、仕事は続けるだろう。
今の私は夫にもっと稼いでほしいとか、一家の大黒柱になってほしいとか、世間がいう「男としての役割」は一切求めていない。そして、そんな自分を悪くないと思える。要するに、私はこういう生き方や結婚が向いていたのだ。
夫はどうなのか?
と思ったので、帰宅した夫に「なぜ我々は離婚してないんだと思う?」と聞くと「お互い好きに生きてるからだろう」と返ってきた。
アル「それは私もキミにいろいろ押しつけてないってこと?」
夫「ああしろこうしろ言われたら、あんまりうまくいかなかったんじゃないか」
押しつけられるのがイヤという点で、我々は共通しているらしい。だが、それ以外はだいぶ違う。
夫は世紀末的状況になってもサバイブできるが、私はたぶん3秒で死ぬ。わが家には夫がそろえた防災グッズや武器があるので、天変地異が起きた時や暴漢が家に侵入した時は、夫に活躍してほしい。
一方、貯金・保険・不動産等については私が担当している。
以前、夫に老後の備えについて話したら「いずれ文明は破たんして紙幣は紙くずになるぞ」と言われたので「じゃあ私は破たんしないバージョンを考えるから、キミは破たんしたバージョンを考えてくれ」と返した。夫は「ボーガンを買おうかしら」とわくわくしていた。
老後の備えにボーガンを買う夫はイヤだ、というかイかれてる、と世間は言うかもしれないが、私はそんな夫に萌えるのだ。それに、得意分野が違う方がチームとして強い。
夫婦は割れ鍋に綴じ蓋で補い合えばいいし、それは夫婦だけに限らない。人には得意不得意があって、多様な人々で支え合うのが社会だろう。
家事や育児が得意な男性もいれば、働いて稼ぐのが得意な女性もいる。ボーガンの名手の女性だっているだろう。男・女にカテゴライズせず、それぞれが得意分野で能力を発揮すればいい。そうすれば、みんなが生きやすい世の中になるはずだ。
以前、テレビに小泉元総理と細川元総理が映っていて「2人とも、おばあさんみたいになってる!」とびっくりしたら「人は年をとると性別がわからなくなっていく」と夫に言われた。
たしかに、おじいさんみたいなおばあさんもいる。老後はだんだん性別が曖昧になっていくらしい。
だったらもう、性別なんていらないんじゃないか。女として、男として、妻として、夫として…そんなものはとっぱらって、私は「人として」夫と生きていきたいと思う。
Text/アルテイシア
※2018年3月20日に「TOFUFU」で掲載しました。
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