自慰に励もう
人生らくらくモードになるには、自分の感情に注目するのもおすすめだ。人は感情の正体がわかると安心する。
夜中にベランダで物音がすると不安で眠れなくなるが、「風でゴミ箱が倒れた音か」とわかるとぐっすり眠れるように。
結婚後も、私は「どうしようもなく寂しくなる」という発作が起こることがあった。
「今の私には家族がいて友達もいるのに、なんでだろう?こんな自分はおかしいんじゃないか」と不安になると、感情に振り回される。
そこで己の心をじっと見つめてみると「子どもの頃の孤独な私が、寂しくて泣いてるんだな」と気づいた。
私はエモいのは苦手だが、苦手とか言うてられないので「大丈夫、今は家族も友達もいるし、安心な居場所もあるし、もう寂しくないよ」と心の中の自分を慰めた。世界はそれを自慰と呼ぶんだぜ。
この自慰をコツコツ続けるうちに、いつのまにか発作が起こらなくなっていた。
「自分に自信を持て!」「ポジティブに生きろ!」と修造カレンダーみたいなことを言われても、簡単にはできないから悩むのだ。そんなスパルタ精神論じゃなく、ちょっとした考え方のコツを試すことで、生きるのが楽になる。
そもそもこんなしょっぱい世の中で、自分ぐらい自分に甘くしないとメンがもたない。みんなどんどん自慰に励んでほしい。
スパルタでいうと、義母も「勉強しなさい!」と息子を竹定規でしばいていたそうだが、「あの子は一度も親の言うことを聞かなかった」と振り返る。そんな夫のブレない姿勢が頼もしい。
義母は現在も「仕事のデキる男になれ!男は出世しないと価値がない!」と息巻いている。
自分の母親だったら絞め殺したいが、他人の親だしアラ傘寿のおばあさんなので、スルーしている。
だがある日「アルちゃんもそう思うでしょ?」と聞かれたので「いや私は出世なんかしなくていいし、彼が明日会社を辞めてもいいですよ」と返したところ
義母「会社辞めてどないするの!」
私「カッパを探しにいくそうです」
義母「ハアッ?!!!」
義母は「キ●ガイを産んでしもた…」と嘆いていたが、私は「退職後にやりたいことが山ほどある」という夫が頼もしい。
「カッパを探すだけだと退屈しない?」と夫に聞くと「カッパを探すのがどれだけ大変か知らないのか?」と返された。もちろん知るわけないが、夫はカッパを探すだけじゃなく、イヌワシの写真も撮りたいそうだ。
「イヌワシの写真を撮るには何日も山奥に潜むので、熊に襲われる危険がある。だから狩猟免許をとらないといけないし、散弾銃も買わないといけないし、グリズリースーツも必要だ。接近戦になった時のために体を鍛えて…」と熊と闘うのが目標になっているが、まあ好きにすればいい。
我々は好きなものが全然違うが、べつに何も困らない。