バカボンのパパを飼おう
神戸はそこまで揺れなかったとはいえ、人生二番目の大きな地震である。
不安や恐怖でパニクったり、過去のトラウマがよみがえるかと思ったが、自分でも意外なぐらい平気だった。加齢ってすばらしい。
JJ(熟女)になると二の腕が飛行できそうなほど太くなるが、メンも太くなって生きやすくなる。
日本の社会は「女は年をとると価値が下がる」という脅しで溢れているが、お嬢さん方はそんなものに怯えないでほしい。加齢にはかけがえのない恩寵がある。
私は人類最強の部族「関西のおばちゃん」に着々と進化しつつある。それは加齢の影響もあるが、夫の影響も大きい。
私は骨太の肥満児だったが、メンは折れやすく繊細だった。鉄骨娘のCMを観ながら「鋼の精神力がほしい」と願っていた。この鉄骨娘がわかる人は年寄りだろう。
そんな傷つきやすく、落ち込みやすく、情緒不安定になりがちな人間だったが、夫と出会ったことで情緒がどっしりと安定した。
前回のコラムでこのように書いた。
『「こんなダメな自分を変えないと幸せになれない」と思っていたが、夫は「いろいろ大変なことがあったんだから、不安定になって当然だろう。そのままでいいんじゃないか」と言ってくれた。「それでいいのだ」と全肯定されたことで、私も自分を肯定できて、メンが安定したのだ』
現在の私は「それでいいのだ」とバカボンのパパイズムで生きている。自分を受け入れられるようになると、他人も受け入れられるようになった。
「When you smile, the world smiles with you(あなたが微笑めば、世界が微笑む)」という歌に「ほんまやで、ビリー・ホリデイ」と頷く日々である。
かといってつねに半眼で微笑んでいるわけではなく、しょっちゅうキレている。
たとえば男が女の見た目をディスる場面を見ると、血管が48本ぐらい切れる。そこで「なんでこんなにムカつくんだろう?」と自分の感情に注目すると「子どもの頃に太ってることを男子にからかわれたからだ」と気づく。
つまり私が怒りっぽいとか子どもっぽいとかじゃなく、傷ついたんだから当然なのだ。それでいいのだ。
と受け入れて自分を責めなければ、それ以上悩んだり引きずったりすることはない。
朝ドラ『半分、青い』を観賞中、漫画家デビューした鈴愛のために両親がアンケートハガキを大量に書くシーンを観て「ケッ」とテレビを消した。
これは純度100%の妬みである。
私は親に愛されて育った娘が羨ましい。「自分の娘ぐらいの年の子に嫉妬するなよ」と言われるかもしれないが、私は『となりのトトロ』のメイちゃんすら「父親に愛されていいよな」と羨ましい。私だって「お父さん、お花屋さんね!」とかやりたかったわクッソー!!
と4歳児に嫉妬する42歳の自分を「欲しかったものをもらえなかったんだから、しゃあない」「それでいいのだ」と受け入れている。
「こんな自分はダメなんじゃ」と自責しなくなったことで、私は機嫌よく生きられるようになった。
上機嫌は周りや家族にも伝染する。そしてますますハッピーになる。
かつて私にとって世界は地獄だった。アルミンのように人生ハードモードだったが、それがらくらくモードに変わったのは「それでいいのだ」を導入したからだ。
皆さんも脳内にバカボンのパパを飼ってほしい。鼻毛を5本ぐらい出してみるのもいいだろう。