老後こわすぎ!

 フリーだと現場で同業者の先輩とまず出会わないし、プライベートで知り合っても「年収いくらっすか?」「貯金どんぐらいあります?」なんて赤裸々な会話はしたいけどできません。
インスタを覗くと同業者のライフスタイルは全員年収1億円くらいに見えるし、そもそもフリーのエディターなんて浮ついた(いや実際は違うけど)職業を選ぶ者は、ハナから実家が太いか旦那が稼いでるか、の二択にしか見えない。はぁ。わかんない。私って、いくら稼いでればOKなの? 貯金はいくらないとヤバイの?

 漠然とした不安の答え合わせをしてくれる明確な“ものさし”が欲しくなった私は、自分よりも上の世代のフリーの方々が著した「老後のお財布事情本」を買い漁ったけれど、ハッキリ言って、まったく参考になりませんでした。
だって例えば、数千万単位で口座に残高のある杉並区4LDK持ち家(ローンなし!)みたいなイラストレーターが「老後やばい」とか言ってるし、年間300万円も貯金し続けてるデザイナーが「将来が不安」とか言ってる。え? なにごと?

 これが自慢なのか自虐なのかピンとこない時点で、私はフリーランスとしての自分の経済状況を客観視できていない、ということだけがわかった。だいたい本が出せるほど名の知れたフリーと、自分ごときを比べたのが間違ってた。もう2年もやってるこの連載も、一向に書籍化の声が聞こえてこないし。ギャー!

 不安すぎてよせばいいのに「サラリーマン 平均年収」とググるとフリーターの旦那のそれよりも当たり前に上回っていて愕然とする。さらに、「老後資金 夫婦」でググれば容赦なく3000万やら5000万やら途方も無い金額が目に飛び込んでくる。そ、そんなにお金持ってないと生き抜けないのか、老後って。老後こわい。
家のローン完済して子供を大学までやった後で、なお手元にサラリーマンの平均年収の10倍ほどの現金を残しとけって、フリーランス&フリーター夫婦には無理ゲーじゃないですか。だいたい、こんな沈みかけた泥舟みたいな日本で、退職までに5000万も貯めないとマトモな生活できないって正気です? ねえ、本当にみなさん、そんな真っ当な生き方してるの? (涙目)

 私も旦那も、退職金ゼロ、年金は体にガタきたときの医療費分ぐらいしか期待できないとすると、死ぬまでの生活費は働いて稼ぎ続けるしかない。貯金でまかなう、という選択肢はフリーにはないのだ。

 そもそも、65歳で死ぬか95歳まで生きるかも分からないのに、そんな大金を使わずにプールしておくなんて私にはできそうもない。空気も経済の流れも読めない私は、貯めたお金で投資や商売を始めたら秒で溶かしてしまうに決まっているし、家賃収入を見込んで投資用物件を買うにも、今の東京の深刻な空き家・空室問題が20年後に解決してるわけがないですよね。
調べてみたところ、60歳から誰でも登録できるシルバー人材派遣は、最低賃金法の適応対象外なんだそう。よって重労働の割に実入りが少ない案件も多いという。高齢者になっても搾取されるのかよ。考えれば考えるほど、私たち夫婦の未来が、っていうより、日本の未来が暗すぎて…。

 こうなったら、老後も「社会のお世話になる」という考え方じゃなく、「自分の得意なことで社会貢献してお賃金をいただく」、というスタンスでいかなくてはなるまい。我々フリーはしぶとく業界にかじりついて、完全に干されるその日までお仕事を全うするのが、結局は一番幸せな老後なのでしょう。そうだ、シルバー求人をググッているヒマがあれば営業行こう!

 あ、フリーランスで年金と健康保険料払ってないんだよね〜っていうアウトローは、遡ってでも支払った方がいいぞ! 将来自分に介護が必要になったとき、国保から天引きの介護保険で、1割負担のみでサービス受けれますから! (たまには有益なことで締めますね)

Text/ティナ助

次回は<ダラ嫁、一念発起で家を買う。—前編— >です。
フリーランスのエディターとして働いているティナ助さん。現在は立派なマイホームをお持ちですが、家を買うまでには並々ならぬ苦労があったそうです。フリーランスで働いている方にも、そうでない方にも必見のコラムです!

前後の連載記事