タイトル詐欺に思われかねない「夫の意外な一面」/カレー沢薫

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ゴディバ (GODIVA) ラッピングチョコレート ハート缶 (10粒入)

FGOをやる気にならない。

確かに、土方さんは出た。宝具レベル5にもなった。しかしまだステータス上限まで育成したわけではない。むしろそのためには、継続的にプレイが不可欠だ。

だが、どうしてもやる気にならない。飽きてしまったのか、もちろん、否だ。

腹いっぱいで、何も入らねえ。

現在の状況を説明すると、これである。

オタクというのは常に乾いている。

公式からの供給がありすぎて「しんどい…」と言っているオタクもいるし、実際しんどいのだが、それは「ムニャムニャもう食べれない」というデブの寝言であり、はっきり言って贅沢な悩みである。

オタクが全員そんな飽食の国に住んでいるわけではない。滅多に供給のない国のオタクは常に、推しに飢えている、ごくたまに与えられる物資をホルモンのように噛みながら「長ぐついっぱい、推しが食いてえなあ」と思っているし、供給の多い国でも、食っても食っても推しが食い足らないという餓鬼状態になっているオタクだっている。

私もそれである。もちろん、持ちキャラである土方さんは毎日見ているが、それ以外、シナリオにおいて土方さんの出番を、セリフを一つでも多く、と願ってやまなかったし、正直「土方さんなら何杯でもいけるし、100人乗っても大丈夫」と思っていた。

だが甘かった。

俺の物置はあっけなく倒壊し、今橋の下で「クラムチャウダーしか食べれない…」と失恋したての大学二年生みたいなことを言っている。

そんな、100人乗って大丈夫だったはずのオタク物置を一撃で粉砕したのは「バレンタイン」である。

これを書いているのは2月11日なので、まだバレンタイン前なのだが、私のバレンタインは終わっている。バレンタインどころか、人生と世界までもが終わっている。

土方歳三にチョコを渡した時点ですべてが終わってしまったのだ。

FGO内でバレンタインイベントが行われたのだ。キャラクターにチョコをもらったりあげたりできるのである。

しかしFGOは恋愛ゲームではない。バレンタインイベントという特性上、恋愛感情を臭わせてくるキャラもいるが、恋愛ゲームほどではないし、中には全く恋愛要素を出さないキャラもいる。

よって土方さんにも期待していないと言えばウソになるが「なんてつれない…好き!」「やっぱお返しはチョコかけたたくあんですよね…好き!」ぐらいのものを想定していた。

そして、その想定はある意味間違っていなかった。

「好き……」

正解は「!」マークなどつける余裕がない「好き」が来る、だ。

内容に関してはネタバレになるので触れないでおくが、一言で言うなら「やりすぎ」

「チャリで来た」感覚で「全力で殺しに来た」という感じである。

満たされることはないと思っていた飢えが、乾きが、一瞬に満たされ、ついにそれは私に考えてもいなかった行動を取らせた。

「残す」

イベントを途中でやめてしまった。本当に腹いっぱいになりすぎて動けなくなってしまったのだ。

土方さんのステータス上げは少し遅れてしまうが、仕方がない。むしろ常に飢えたオタクが満腹になるなんて滅多にないのだ。今はこの膨満感を楽しみたい…。

「最近ソシャゲの話がない」というクレームが担当からついたので、これで満足だろうか。だが言われなくても勝手にこの話をしだしたと思う。

何を話していても、最終的に推しの話になっているのが我々の会話術だ。