正直なところ、その女友達から結婚式の招待を受けたのは、少し意外でした。というのも、かつては仲が良く、毎週のように朝まで遊んだり、一緒にバイトをしたりもしていたけれど、いつの間にかすっかり疎遠になってしまい、その時点では一年に一度か二度、複数人で集まろうというときにしか、顔を合わせることもない関係だったからです。けれども、結婚式に呼んでもらえるのは嬉しいし、久しぶりの友人たちとも再会するのも楽しそう。せっかく招待されたのを断ることもない。というわけで、参加することに決めたのです。
結婚式で久しぶりに会ったウエディングドレス姿の彼女は美しく、とても幸せそうでした。会場は都心の綺麗なゲストハウス。大きな窓の外には青空が広がっていて、一点の曇りもない良き日……のはずが我々花嫁側ゲストテーブルがザワついていたのは、そこにいる誰もが、新郎と会うのは、その日初めてだったということが判明したからでした。
「ええっ、誰も何者だか知らないの?」
しかし、現にわたしだってその当時付き合っていた恋人のことを、その場にいる誰にも会わせたことはない。だから、誰も彼女と結婚する相手がどういう人なのか知らなくても、そこまでおかしいことでもありません。浅黒い肌の金色の髪と、ちょっと輩っぽいルックスが気にならないわけではないけれど、今時、きちんと結婚式をするくらいなのだからちゃんとした人なのだろうと、新郎の隣で微笑む彼女を見て思った、後日のことです。
SNSにあるメッセージが…
突然、SNSを通して彼女の夫を名乗る男性からメッセージが届いたのです。二次会で挨拶はしたもののロクに話していないし、そもそもその場でわたしが名乗ったのは本名。SNSはペンネームの「大泉りか」でやっているのに、どうやって辿り着いたのかもわからないし、いったいなんの用事が……と訝しみながらメッセージを開いたところ、そこには「アダルト系のプロダクションを経営していること」そして「お願いしたい仕事があるので、近日、打合せをお願いできないか」と書いてありました。
なるほど。職種に“アダルト”という共通点があるために、妻がお互いにメリットがあると思ってつないでくれたのか。しがないフリーランスの身としては、ありがたい。旧友の計らいに感謝しつつ、数日後に会って打合せをすることも決まったのもつかの間、打合せ日前日の夜、再び友達の夫から連絡が入りました。いわく「君に会うことを妻が嫉妬しているので、明日はペンディングにしてください」とのこと。
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