姉と一緒に住む家で
泊まらせてくれる、というから、当然コンドームも買い、リュックに忍ばせて彼女の家に行った。家に入ったら仰天した。なんと、一緒に住んでいるという姉もいたのだ。こちらとしては、姉がその日はいないから泊まらせてくれる、と思ったのだが、そういうことではないのだ。僕はこの日はセックスできないのか……と落胆し、オリンピックを一緒に見た。
姉が作ってくれた数々のおいしい料理を食べ、23時を過ぎたところで「お風呂に入ってくださいよ」と言われた。当然こちらも旅行用の歯磨きセットは持ってきていたので、風呂から出たら歯を磨いた。このときはまだ彼女の姉は「これから私は彼氏の家に行ってきますね」などと言うのでは、と思っていたのだが、動く気配はない。
吉田さんも風呂に入ったがその間、僕と彼女の姉はテレビでニュースを見続ける。姉はこう聞いてきた。
「ニノミヤさん、今日、泊まっていくの?」
「吉田さんはそう言っていますが、お姉さんにもご迷惑なので帰りますよ」
「いや、別に泊まっていって構いませんよ。私は適当な時間に寝ますので」
そうこう話しているうちに、吉田さんも風呂から出てきた。髪の毛をドライヤーで乾かし終えたところで、「ねぇねぇ、ニノミヤさん、寝ようよ。お姉ちゃん、おやすみー!」と言った。
こちらは帰るつもりだったのにまさかの展開である。彼女の部屋には大きなベッドがあり、「ニノミヤさん、セックスしよ! ずっと楽しみにしていたの」と言う。
「いや、お姉さんいるでしょ? 音を立てたりしたら彼女に申し訳ないじゃんか!」
すると、どうやらこの姉妹の間では、互いの恋人を家に連れ込んでもOK、そしてその晩セックスをしてもOKという決まりになっているのだという。
「だからね、ニノミヤさんとは今晩何回ヤッてもいいの。別にこれからもウチに来て構わない。お互い学生だからラブホ代なんてもったいないでしょ? お姉ちゃんもいることは多いと思うけど、気にしないでいいよ。場合によっては、お姉ちゃんの彼氏とハチ合うこともあるかもしれないけど、それでも私とはヤればいいから」
こんな展開は人生で初めてだったのだが、かくして僕はその後、姉が喘ぎ声を聞いているであろう場で何十回もセックスをすることとなったのだ。ただし、吉田さんの姉の恋人という存在が来る日にハチ合うことはなかった。
もしかしたら、吉田さんは、姉の喘ぎ声を聞く人生がとことんイヤになり、自分が時には聞かせたいと考えたのかもしれない。それから半年ほどで僕と吉田さんは別れたが、若干倒錯したシチュエーションのセックスというものはあのとき以来経験していない。
Text/中川淳一郎
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