ハロウィンが今年から急に盛り上がった理由
苦節ン十年、「今年こそはくる!」と毎年言われながらいまいちブレイクせず、長すぎる下積み時代を経て、今年ようやくお茶の間の市民権を獲得したものといえば?
「マキタスポーツ」と答えた人は、きっとお笑い好きです。
個人的にはマルをあげたい気持ちでいっぱいですが、今回のテーマ的には残念ながら不正解。
私が用意していた正解は「ハロウィン」でした。
今年、六本木や渋谷でたくさんの仮装をしたパーティーピープルたちが街にあふれているのを見て、びっくりした人は多いはずです。
「え、日本ってこんなにハロウィンで盛り上がる国だっけ?」と。
数年前までは、パーティー文化を持つ六本木など一部のリア充による“貴族たちの遊び”という風情だったハロウィン。
それが、今年になって急に一般庶民にまで“降りてきた”印象を受けます。
よくよく考えれば、アキバ系のコスプレイヤーはもちろん、原宿系のゴスロリファッションや、渋谷系のギャルファッションも含め、もともと日本人はコスプレ的なファッションが大好き。
「魔女とかカボチャにはピンとこないけど、要するに自分の好きな漫画・アニメ・映画のコスプレをすればいいんでしょ?」と気付いた人たちが、いっせいにその楽しさに目覚めた感はあります。
おもしろいのは、クリスマスやバレンタインが“恋愛”や“男女のカップル文化”を媒介に日本に定着したイベントであるのに対して、ハロウィンは純粋に“ファッション”や“カルチャー”を媒介としてさまざまな文化圏を飲み込むイベントになっていく予感がすること。
この感じ、私には「きゃりーぱみゅぱみゅ」のブレイクと通じるものを感じるのです。
男ウケ目線の“カワイイ”はもう古い!
きゃりーぱみゅぱみゅは、もともと『Zipper』や『KERA』など原宿系ファッション誌の読者モデルとして人気が出ました。
やがて、渋谷系のギャルマインドを取り込んだ“渋原系”に侵食し、女子カルチャーにおける支配領域を着実に広げていきます。
しかし、彼女がここまで世間を席巻してブレイクすることを正確に予測できた男性、あるいは現在、彼女の魅力を身をもって実感できている男性は、正直あまりいないのではないでしょうか。
なぜなら、きゃりーぱみゅぱみゅは、男ウケ/男性目線での“カワイイ”評価から徹底して逃れることに成功した、ほぼ初めての“女子のための国民的アイドル”だからです。
もちろん、これまでも篠原ともえやPUFFY、吉川ひなのといった、“男ウケはしないけど女子から絶大な人気を誇るカルチャーアイコン”は存在しました。
でも、彼女たちがテレビに出ると、それは必ず“世間一般からは理解されない痛カワイイ存在“として扱われてきたのが実際のところ。
それは、テレビというマスメディアが“男性、とくにオヤジの目線で理解できるように世間を切り取って見せる箱”だったからです。
ところが、エビちゃんブームの終焉を最後に、女性ファッションのトレンドは赤文字雑誌中心の“男ウケ至上主義”からとっくに脱却。
“カワイイ”という言葉は、男性不在でも成り立つ、女性同士の共感を指す概念として独自に進化しました。
にもかかわわらず、テレビの世界では、いまだに男ウケする“カワイイ”が評価軸の主体。
その結果、それぞれのテリトリーでは“カワイイ”のシンボル的存在だったはずの小森純や益若つばさといったカリスマたちは、どう扱われたでしょう。
テレビという男目線の戦場に引きずり出されることで、「俺たちが言ってる“カワイイ”って、そーゆーことじゃないんだよなあ……」という苦々しさと嘲笑の視線に晒されているのは、みなさん周知の通りです。
しかし、きゃりーぱみゅぱみゅには、そういった“残念感”や“晒され感”がありません。
それは、テレビに代表される男目線の文化圏を、彼女がハナから相手にしていなかったから。
その代わり、アキバ系のオタク文化や、ついにはサブカルチャーまでを射程にとらえて自らのスタイルに取り込むことで、ファッション/カルチャー領域を横断していきました。
テレビが力を失い、男たちの情報感度が錆びついている間に、きゃりーぱみゅぱみゅはさまざまな文化圏を飲み込み、もはや男たちが嘲笑することのできないくらい巨大な“ファッションモンスター”へと化けていたのです。
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