男の言い分コラム・勝手にタレント名鑑 第1回:男は沢尻エリカを飲み込めない

第1回:男は沢尻エリカを飲み込めない

稀代のピカレスク・ヒロイン“エリカ様”

By masterq Something to Confess.By Verano y mil tormentas.

 沢尻エリカ。

その名前を聞くと、男はみなうろたえ、ためらい、ひるみがちになります。
歯ごたえがありすぎて咀嚼できねえ。
そう言い換えてもいいかもしれません。

この“飲み込みづらさ”の正体はいったい何なのでしょうか。

彼女のことを、単なるゴシップ・ヒロインだと切って捨てるのは簡単です。
たしかに芸能界には、ゴシップとスキャンダルだけで延命をはかってきた枠が存在し、たとえば梅宮アンナや神田うの、叶姉妹といった系譜に彼女を位置づけることも、まあできなくはありません。

「エリカ様」「沢尻会」「別に…」といったわかりやすいベタなフレーズ。
涙の謝罪会見をしておきながら、のちに「あれはウソだった」とケツをまくるジューシーな展開。
突然の結婚・離婚騒動と、急速なセレビッチ化。
さらには、芸能活動復帰にあたってスペインに設立した個人事務所の名前が「エル・エクストラテレストレ」(スペイン語で「宇宙人」の意味)だというディテールの絶妙さに至るまで、そのちょうどよすぎるエピソードの数々には、盤石の安定感さえ漂います。

しかし、ダルビッシュ紗栄子の狡猾なしたたかさ、 加護亜依の痛々しすぎる凋落ぶり、園山真希絵の底知れぬ不気味さなどに比べると、沢尻エリカの香ばしさは「まあエリカ様だし、仕方ないよな」みたいな、生かさず殺さずの許され方ですっかり受け入れられている気がするのです。

もはや「愛されている」といってもいい。
“ピカレスク・ヒロイン”という新たなジャンルの存在を、我われはここに確認できるのです。

そして、その“許され”の根拠は、よくも悪くもただ一点、「旦那が珍妙」ということに尽きるのではないでしょうか。

エリカ様によぎる半ズボンの影

 思えば沢尻エリカは、もともと超ド級の“ハンパない美少女”として、芸能界に彗星のごとく登場しました。
しかも、映画『パッチギ!』では各新人賞を総ナメ。
その後も映画『間宮兄弟』『シュガー&スパイス 風味絶佳』や、ドラマ『1リットルの涙』『タイヨウのうた』などで役にも恵まれ、「若いのに確かな演技派」という評価を確立。
まさに順風満帆の女優道が開けていたはずなのです。

 その歯車が狂いだした直接のきっかけは例の「別に…」事件ですが、透明感あふれる凛とした清純派美少女だったエリカ様がセレビッチ化していくそのきっかけを与えたのは、誰がどうひいき目に見ても、明らかにあの「半ズボンおじさん」こと高城剛との出会いにほかなりません。

 つまり、エリカ様は女優として築き上げた輝かしいキャリアを切り崩して、「珍妙な半ズボンとの結婚」という負債の返済にあてている最中であり、その“台無し感”“若気の至り”への同情から、世間は彼女をあたたかく見守っているのではないでしょうか。

うがちすぎ、と言われるかもしれません。
しかし、それこそが世の男性がエリカ様に対して抱く大いなる“飲み込めなさ”の正体でもあるのです。

男が気にしているのは“高城剛の呪縛”

Chad Buchanan by Ryan Abel By Ryan Abel Unterwegs in meinen alten Cross Terras By hiker32

 高城剛といえば、イケイケだったバブル景気の時代に映像作家、広告プロデューサーとしてブイブイ言わせた経歴の持ち主。
擬音でいえば“パヤッパヤ”みたいな、鳴り物入りのテンションと底抜けのバイタリティで世間を渡り歩いてきた世代です。
アニマルライクな顔立ちを見ればわかりますが、たぶん精力も絶倫でしょう。

 そんなバブル期の余勢を駆っていい感じの立場にいる中年男性に対して、先細ったしょぼい経済状況しかしらない現代の若い男性は、ただでさえ一定のルサンチマンを抱えています。

 そこへきて、エリカ様との結婚です。
ギッタギタに脂ぎったオヤジに、若くて清純な美少女を奪われ、あまつさえセレビッチ化させられてしまったという屈辱。
世の男性は、フロイト的にいえば父親からの去勢不安にも似た脅威を感じたことでしょう。

「もともとエリカ様本人にセレビッチの素質があったから、ああなったんでしょ?」なんて読みは、この際関係ありません。
エリカ様の言動に拭いがたい“半ズボンの影”を感じる限り、男はエリカ様を咀嚼し、受け入れることはできないのです。

 なんで自分はモテないんだろう……と思っている女性のみなさん。
自分でも無意識かつ無自覚に、元カレや男友達の影響が言動に滲み出てしまっていませんか?
その腐れ縁や呪縛から逃れない限り、新たな出会いも、素敵な男性も寄ってこないと心得ましょう。

Text/Fukusuke Fukuda