こんばんは。
夏は、恋のときめきと桃を食べたい気持ちの区別が難しくありませんか?
桃を白ワインにたっぷり浸けたやつを飲みながらこれを書いています。
私は若いころ一度アメリカに住んでいたことがありまして、当時は日本で公開されていなかったり、ソフト化もしていないような作品をむさぼるように観まくっていました。そんな私が現地の友人たちに「お、お前、観ていないのか?!あの映画を…!」と驚かれた映画が、『ヒース・レジャーの恋のからさわぎ』です。
じゃじゃ馬女を恋に落とせ!
確か昔は邦題は単に『恋のからさわぎ』だったと思うのですが、ヒース・レジャーが亡くなってからDVD化されたときには彼の名前を冠していました。こっぱずかしい感じのタイトルだけど、ヒースのおかげでかたちになったと思うと、愛しいような気持ちになりますね。
ここで湿っぽいことを書くつもりはありませんが、彼の魅力がこの映画を200%良いものにしてるのは間違いありません。ヒースを知らない人にこそ観てほしい作品です。
物語の舞台はハイスクール。転校生のキャメロンが一目惚れしたのは学園のアイドル、ビアンカ。ところが彼女には、父親の作った「姉のキャットが誰かとデートをするまでは、誰ともデートできない」という鉄の掟が。でも天真爛漫なビアンカとは真逆の偏屈で、辛辣で、超がつくほどキツい女のキャットに言い寄る男子なんていない。こうなりゃ金で解決するしかない。危ない噂の多いアウトロー男子パトリックを雇って、キャットにアタックさせることに……。
かなり日本の少女漫画然としたあらすじだけど、実はこの作品も前回のオースティン同様とある高名な作家絡み。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『じゃじゃ馬ならし』 の現代版となっています。設定以外はあまり原作を踏襲していないのですが、随所にシェイクスピアネタが入ってたりします。(シェイクスピアの作品には『から騒ぎ』もあるのですがそれとは関係ないという……ややこしいな……)
まず魅力的なのは「じゃじゃ馬」キャットの強烈なキャラ。
「自分の人生コントロールできないからって私の人生に口出ししないで」
「この社会って、男はクソ野郎でいた方が認められるからね」
進路を指図する父親に怒り、みんなにいい顔をする妹に怒り、ちょっかい出してくる男子に怒り……誰もを言い負かす鋭い皮肉屋です。
も~~~、とにかくずっとムスッとしてる。世のヒロインこんなムスッとしてることある?! と思いますが、でもそんな彼女だからこそちょっと笑ったときや照れたとき、心を開いていく過程がとてもかわいい。
変わり者を中心に動くムズキュンストーリー
対するパトリックも学園の変わり者という意味ではキャット同様。「去年刑務所に入っていた」とか「生きたままアヒルを食べた」とか、陰でめちゃくちゃ言われています。
最初は小金欲しさに近づいたキャットの芯の強さと不器用さに触れるうち、あまのじゃくな彼女を放っておけなくなってしまう。憎めない笑みで次々に思い切ったことをしでかす彼の派手なアプローチは青春ド真ん中で、毎回「いいな~!!」って笑顔になります。
パーティーで酔っ払ったキャットとパトリックの会話は丁々発止でとても楽しいシーン。
「別に私が二度と目を覚まさなくても気にしないくせに」
「気にするさ!」
「どうして?」
「そしたら他の、ちゃんと俺のことを好きな子を構わなきゃいけなくなるだろ」
「そんな女の子が実在すんの?」
「ほらな。君がこんなに嫌ってくれるから、他の子に好かれる必要がない」
好きと嫌いがあべこべになっている会話。秘密を間にはさみながらも、曲がりくねった道を通って徐々に近づいていくふたりの距離にじたばた。もどかしくてきゅんときます。
終盤に明かされる、世界中を敵に回すかのように振る舞う女の子・キャットの頑なな態度に隠された苦い秘密。 ティーンから大人まで多くの人が悩まされる恋愛のリアルな葛藤に、今度は胸が痛くなりました。
ラストに響いてくるのはこの映画の原題『10 things I Hate About You(あなたを嫌う10の理由)』。ロマンティック・コメディには相応しくないタイトルのように思えますが、勿論ここにも素直になれない恋心が隠れています。
やっぱりぜひ観てもらいたいのはクライマックスなのですけれど、絶対私なんかから知らされてほしくないので、一旦秘密に。
とにかく破壊力のすごいシーンがたくさんです。どうかがっつりときめきの必要なときに、観てみてください。
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