穏やかで貞淑な妻と、美しい美貌の恋人との間で三角関係に悩んだ-ロダン編-
フランソワ=オーギュスト=ルネ・ロダンは、フランスの彫刻家。19世紀を代表する彫刻家とされ、『近代彫刻の父』と称されます。代表作に『地獄の門』、その一部を抜き出した『考える人』などが有名。
彫刻家への夢を支える献身的な妻・ローズ
『近代彫刻の父』と称されている、ロダンは24歳の時に生涯の妻となる裁縫職人のローズと知り合い、長男オーギュスト・ブーレ・ロダンをもうけています。芸術だけではまだ家族を養っていくことができなかったロダンはベルギーに渡り作品制作の時間を割いて装飾職人としての仕事をし、家族を支えました。そんなロダンを妻ローズは献身的に支えています。しかし、イタリア旅行中にドナテッロとミケランジェロの彫刻に衝撃を受け、十数年ぶりに彫刻家として活動を開始。35歳のときに十数年ぶりに彫刻家としての活動を開始します。ロダンのき極めて緻密でリアルな作品たちは審査員の目にとまり、ロダンの名は一気にフランスに広まります。
突如現れた美しき教え子との禁断の恋
才能を認められたロダンは40歳のときに国立美術館を建てるので、そのモニュメントを作って欲しいとの依頼がうけます。そのテーマとしてロダンが選んだのがダンテの『神曲』地獄篇に登場する『地獄の門』です。ロダンはこの大作品に取り組むに当たり、粘土や水彩画などでデッサンを重ねていきましたが、中々構想はまとまりませんでした。
この悩める時期に出会ったのが教え子のカミーユ・クローデルです。
女性でありながら彫刻家を目指す、カミーユはフランスの劇作家、詩人、著作家、外交官ポール・クローデルの姉で類まれな美貌と才能の持ち主でした。瞬く間にロダンはカミーユの才能と美貌の虜に! 二人は人目もはばからず愛し合います。お互いの彫刻が愛の極相を互いの裸体で表現したことでスキャンダルは広がり、それはパリの美術界にとどまりませんでした。ロダンは「着物を脱ぐ女性の美しさは、雲を貫く太陽のようだ」という言葉を残しています。 このスキャンダルでロダンよりも教え子で愛人であるカミーユのほうが好奇の目にさらされます。しかし、ロダンとの関係を保つため、恥を捨ててロダンに合わせます。妻ローズもまた顧みられない妻として好奇の目にさらされますが、辛抱強く、牛のように耐えます。
華やかな若い弟子・カミーユとの出会いでインスピレーションを得たロダンは、芸術上の悩みを超克して、大成します。
優柔不断なロダンに振り回される二人の女
ロダンは2人の女性のどちらかを選ぶことはできません。ローズは大きな心の安らぎの存在であり、カミーユは若さと美貌と才能に満ち溢れた刺激的な存在だったからです。その中でカミーユは20代後半にはロダンの子を妊娠するも中絶し、多大なショックを受ける。 数年後ローズが病に倒れ、カミーユがローズと自分との選択を突付けるまで決断できませんでした。結局、年を取り、名声も確立させたロダンは妻ローズの待つ家にふらりと帰ります。妻ローズは顔色も変えず、「あなた、おかえりなさい」と言い、15年の不在を超えてロダンは、「ああ、ただいま」と言っただけだったそう。
ショックを受けたカミーユは以後、徐々に精神のバランスを欠き、ついには精神病院に入院、死ぬまでそこで過ごすことになります。
彫刻家の夢を支え、晩年も共にすごすことができたがロダンの人生の絶頂期は共に歩むことができなかった妻ローズと、ロダンの華やかな絶頂期をともに過ごすも晩年の相手には選んでもらえず捨てられてしまうカミーユ……どちらが幸せだったのでしょうか。
Text/AM編集部