嘘をつくほうが、切り売り

舘そらみ×佐々木ののか×マドカ・ジャスミン対談後半画像
そらみ

今までだって赤裸々エッセイを書く作家はいくらでもいたけど、2人ほど多くの声に晒されてはいなかった。2人のような赤裸々WEB作家は、新しい存在なんだと思うんだ。で、新しい存在の2人よ、ヤイノヤイノ言われながら、これからどうしていく?

マドジャス

いやもう、うるせーよ、ですよ!

そらみ

これからもドンドン書く?

マドジャス

はい。リツイートとかいいねとかって、結局は他者評価じゃないですか? 他人に幸福軸預けるのは、ちょっと性に合わないですね。そりゃクライアントの関係で妥協したりあるかもだけど、少なくとも、自分自身に嘘をつくようなものは世に出したくないから

ののか

それ分かります。ライター始めたばかりの頃、”おてんばドジっ子キャラ”みたいのを演じてバズったことがあったんです。それが自分としてはすごい辛くて、むしろそっちの方が私にとっては切り売りなんだなって

そらみ

自分のこと晒す2人のことを、切り売りしてるなんて言うけど、書きたくて書いてんだからそんなのは切り売りじゃないと。なんなら、もしもそこで嘘ついて書きたいこと書かなかったら、それの方がずっと、魂の切り売りなんだ、と

マドジャス

そうですそうです。人のことそんなに気にして、わざわざ批判してくる方より、ずっとこっちは切り売りしてないと思いますね

ののか

納得して書いてんだから、傷つこうがなんだろうが自分の責任っていうか。もうほんと、ほっといてほしいんですね

マドジャス

そう、ほっといてほしいんですよね……晒した結果のことは、自分で全部引き受けてるんだから

ほっといてほしいよーーーと、バタバタと手足を振る。ほっておいてほしいよー、が、この対談で実は一番多く出た言葉かもしれない。
晒す晒しちゃダメ論争は、もういいと。2人の中でのポイントは、そこには無いのに。

そらみ

ののかちゃんはいつまで書くんだろうね? 生きることにずっと不可欠なのかな?

ののか

わかんないんですよね……火種があったら書くし、火種が無くなったら書かない。でもきっと、まだ火種は起こる気がします

マドジャス

最後にちゃんと言っておきたいのは、得たことしかないんですよ私、こうやって自分のこと書いて

そらみ

わー教えてほしい!

マドジャス

いろんな人と会えて、彼氏と出会えたのもそうですし。本を出せて父親も喜んでくれて、人と人を繋げるようになったり……本当に得てばっかりなんですけどねえ……

ののか

あ、私も家族のことを素直に書いたおかげで、母親との関係が良好になりました

そらみ

そっかー。失うことより得ることが多いし、何より周りの人は応援して喜んでくれてるのに、なぜか”疲弊するからやめなさーい””家族が悲しむからやめなさーい”って、言われちゃうんだね。ほんとーに、もうほっといて!だね

マドジャス

そうですよ。だから、疲弊させてんのあんたたちだから!

そらみ

さらけだすことが大変なんじゃなくて、さらけ出して大丈夫?って心配してくる人がいることが大変なんだっていうね

マドジャス

自分が幸せなことを、どんどん書いていきたいです。それで誰かの幸せとつながっていい連鎖が生まれたらいいなと思ってます。数十年しか生きられないんだったら、好きな人たちと好きな服着て好きな仕事した方が、いい死に方できると思ってるから

「よし、疲弊に足りうるってことだね?赤裸々に書くことは」と最後に改めて問うと、「足りうる!」「疲弊はするけど!」「マジ足りうる!足りうるメリットがある!」と何度も繰り返した。若干酔ってはいたけれど、だからこそ大声で叫んでいた。