女性はこの世界の創造主?

たけうちんぐ レッドタートル ある島の物語 スタジオジブリ マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット 鈴木敏夫 高畑勲 東宝

“レッド・タートル”が何を象徴しているのか。それが本編中に知らされない。恐らく監督に聞いても誰に聞いても、明確な答えは出てこないだろう。 だが、広がる海に紅い甲羅が煌々と映えるその存在は、まるで神様のようにありがたく、美しい。
奇跡的な出会いと、産まれる子どもと、幸せな日々。人は一人で物語を作ることができない。誰かと出会うことで物語が生まれ、人生に息吹きがもたらされることを告げるかのように。

たけうちんぐ レッドタートル ある島の物語 スタジオジブリ マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット 鈴木敏夫 高畑勲 東宝

 男性は結局のところ、何一つ創ることができない。いかに女性がこの世界の創造主であるか、大きな存在であるか、本作がそれを物語っているかのようだ。
この女性は主人公の男に愛、絆、子どもというポジティブなすべてを創り出す。極めて観念的なストーリーであるにも関わらず、とても分かりやすく“人生”というテーマの輪郭を現してくる。

 そこに生きる動物すべての描写に愛嬌がある。笑ったり泣いたりしなくても、男の傍で見守ってくれる4匹の蟹がかわいらしい。
無人島に限らず人間も動物もすべて同じであるかのように、まるで神の視点で生き物を描き出す。
なぜ生きて、どう死んでいくのか。
“人生”を最初から最後まで味わえることができる、スタジオジブリの新しい挑戦を体感してみてください。

ストーリー

 大嵐の中、荒れ狂う海に放り出された男が無人島に漂流する。人もいなければ人がいた痕跡もなく、孤独な日々が始まる。イカダを作って何度も脱出を試みるも、なぜか見えない力によって何度もイカダを壊さ続ける。
そんなある日、男は海で真っ赤な甲羅を背負った亀を見つける。そして絶望的な状況に置かれた状況の中、目の前に一人の女性が現れる――。

9月17日(土)、全国東宝系にてロードショー

監督・脚本・原作:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
プロデューサー:鈴木敏夫
アーティスティックプロデューサー:高畑勲
配給:東宝
原題:La tortue rouge/2016年/フランス・ベルギー・日本合作映画/81分

次回は<西川美和監督×本木雅之主演『永い言い訳』は人間の愚かさと自己愛を問う衝撃作>です。
人気作家・津村啓は妻をバス事故で失ってしまうが、これっぽっちも泣けなかった。心の喪失を“愛情”で埋め合わすかのごとく、津村は同じバス事故で母親を亡くした幼い子どもたちの面倒を見始める——。西川美和監督×本木雅之主演のタッグで人間の愚かさを描く。