エイリアンのおかげで世界が一つに?
本作のシリーズが一貫しているのは、絶対悪を描くことで世界が一つに結ばれることだ。エイリアンが侵略したことで国家間の紛争がなくなり、歴史上前例のない国際協調体制が実現している。現実ではあり得ないが、この作品の世界では新たな侵略が始まるまでの20年間はずっと平和だったのだ。
地球が滅亡の危機に晒される中、人間の小さな悩みも大きな争いも全部がすっ飛ぶ。そりゃそうだ。大災害の時、顔にできた吹き出を気にする人なんていないだろう。ちっぽけな問題もすべて、巨大宇宙船が覆い尽くしてくれるかのように。
でも、今現実で4,800kmの巨大宇宙船が地球に攻めてきたら世界は団結するのだろうか。大統領自らが戦闘機に乗るはずがないし、メインキャストのほとんどが生還するはずがない。ある意味希望に満ちている。破壊的な映像が続くにも関わらず、今の世界に対して「こうなったらいいのに」的な完全なるフィクションに心が癒されてしまう。
当たり前のごとくアメリカ中心で、何の説明もなくとにかくアメリカが最前線に立つ。紛れもない「アメリカ万歳!」が詰まった作品は、一切の葛藤が見えなくて逆に清々しい。ここに近年はなかなか観られない、古き良きハリウッド大作のメンタリティが残っているようで懐かしい気分になる。あの頃から成長して「あらあら、こんなに大きくなって〜」と親戚の子どもに話しかけるように、久しぶりの再会を喜んでしまうのです。
〈悪〉の出現が人々の気持ちを一つにさせるのは、普段の職場でも生活でもあることかもしれない。その〈悪〉が何十億人の命を奪うエイリアンでもない限りは、なるべくこんなことで団結したくないところです。
ストーリー
人類がエイリアンの侵略に打ち勝ってから、20年の月日が流れた。世界が一つに団結することで平和がもたらされたのも束の間、アフリカに残された宇宙船から仲間を呼び寄せるSOS信号が発される。より大きな宇宙船が月面基地を粉砕し、地球に攻めてくる。
前回の戦闘で活躍したホイットモア大統領(ビル・プルマン)とESD〈地球宇宙防衛〉の部長ディビッド(ジェフ・ゴールドブラム)はいち早く危険を察知し、地球の防衛に乗り出す。大統領の娘・パトリシア(マイカ・モンロー)の恋人である、若き戦闘機パイロット・ジェイク(リアム・ヘムズワース)は仲間のディラン(ジェシー・アッシャー)らと巨大宇宙船に立ち向かう。
より科学を発達させたエイリアンの攻撃で防衛システムは無力化され、やがて人類は打つ手立てを失っててしまう。そこで宇宙から飛来した、ある“モノ”が唯一の可能性を提示する――。
7月9日(土)、TOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー
監督:ローランド・エメリッヒ
キャスト:ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマン、リアム・ヘムズワース、マイカ・モンロー、ジェシー・アッシャー
配給:20世紀フォックス映画
原題:INDEPENDENCE DAY: RESURGENCE/2016年/アメリカ映画/120分
URL:『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』公式サイト 前売り券
Text/たけうちんぐ
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