女の恨みは幽霊にも勝る!恐怖の三角関係を描く『クリムゾン・ピーク』

たけうちんぐ 映画 クリムゾン・ピーク Universal Pictures

 想像していた映画とまるで違った。それは肩透かしを食らったわけでもなく、ガッカリしたわけでもない。
雪山。幽霊。秘密。ホラーの三原則が揃い踏みして襲いかかってくるのであれば、心の準備はできている。「幽霊でしょ。見える人しか見えないんでしょ。じゃ、大丈夫でしょ」と高を括っていたら、別の恐怖が待ち構えていた。

 それは誰の目にも見える。そこに、あそこに、すぐここに存在するモノ。幽霊に怯えるはずが、まさか人間に震え上がるとは!

 唯一無二のイマジネーションと、誰もが楽しめるエンターテイメント性。その2つの均衡が取れる監督といえばギレルモ・デル・トロ。『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』で一躍も二躍も脚光を浴びた彼が今回題材に選んだのは、ファンタジーでもロボットでもなく、まさかのゴシック・ホラーでした。

『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ、『アベンジャーズ』のトム・ヒドルストン、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステインが幽霊以上に恐ろしい三角関係を作り上げ、赤褐色の粘土よりドロドロとした人間模様を繰り広げます。

史上最大級の恋愛“失敗談”

たけうちんぐ 映画 クリムゾン・ピーク Universal Pictures

「好きになった人の実家が死ぬほど寒くて超不気味で」
「というか幽霊が住んでて」
「で、姉が狂ってて怖くて」

 恋愛の失敗談は数あれど、ここまで壮絶な失敗はないでしょう。
トーマスがたとえ準男爵の称号を持ち、社交界でも一目置かれる実業家というスペックでも、ちゃんと相手を見て結婚しなさい!と、シンプルで的確な教訓にも読み取れる。
彼氏がやたら過去に囚われていないか。粘土堀削機というマニアックな発明に命を賭けていないか。イーディスが盲目的に彼を愛してしまったために見抜けなかったこの2点は、なるべく確認してから付き合いたいものです。

 幽霊のビジュアルイメージがとにかく怖い。薄っすらとその骸骨姿を浮かべてイーディスの周囲を彷徨う姿は容赦なく不気味だが、「クリムゾン・ピークに気をつけろ」って謎の警告をしてくれるから、実は優しいのかも。
「意外にいい奴じゃん」と油断するも束の間、本当に恐ろしいものが凶器を持って襲いかかってくるのだ。