甲子園と田舎のリビング
静かなお盆でした。毎年一緒に長野に行っていた従兄弟も大学生になって、あっちの家族も忙しい。私たちが来たから時間を作って顔を出してくれたけど、食卓に揃った時間は1時間くらい。
それでも、みんなでぼーっと甲子園を見ながらポツポツと近況を話す、そのたった1時間にも満たない時間が私は嬉しくて、なんだか昔に戻ったようで、本当に楽しかった。と同時に、はっきりとお婆ちゃんの不在を感じて悲しかった。いや違うか。帰って来てるからその辺に浮いてたか。お婆ちゃんの大好きな梨ととうもろこしを私は切ったし、大好きな孫である私が切った梨ととうもろこしを食べそびれるお婆ちゃんじゃないはずだ。
従兄弟たちが帰ると途端に眠気が押し寄せて、リビングで長めの昼寝をかましてしまった。目が覚めた時はもう夕方で、せっかく来たのに寝てばっかりじゃ、ここに来たことをつまらないと思ってるってお爺ちゃんに思わせちゃったんじゃないかと不安に襲われる。
でも、そのお昼寝の夢にはしっかりとお婆ちゃんが登場して、昔みたいに自作のクッションカバーなんかを自慢してくれたし、この昼寝はお婆ちゃんのためってことで。
私たちのパーティーナイト
夜になって、近所の居酒屋に飲みに行った。お婆ちゃんがいなくなってから、時々こんな風に、母とお爺ちゃんと居酒屋に行く。お酒が入ったお爺ちゃんから、お婆ちゃんとの馴れ初めなんかの昔話を聞き出すのが私は大好きで、お爺ちゃんもお酒のせいかやけに饒舌になってくれて、飲み過ぎじゃないかと心配だけど、やっぱり嬉しい。
居酒屋の後は、お婆ちゃんが大好きだったカラオケに初めて3人で行った。なんだかわたしもお爺ちゃんも小っ恥ずかしくて、上手く歌えなかった。母だけが、カラオケを盛り上げようと曲をどんどん入れていて、力になれないことが情けなくて、せめてと思って一生懸命歌った。
家に帰って、私は、もっと絵に描いたような孫らしくはしゃいだりできたんじゃないか、そうするべきだったんじゃないかと、少し悔やんだ。お爺ちゃんは家に着いてからも上機嫌に焼酎を開けて、少しすると、先に眠った。
リビングに貼ってあるカレンダーを見ると、今日の日付の欄に「パーティー」と書いてあるのが目に入った。パーティー。こんな夜が、お爺ちゃんにとってパーティーになるのなら。私は何百回でも養老乃瀧に行くし、何万曲だって歌うよ。
TEXT/長井短
次回は<「パリピかよ」そんな悪口もうダサいから行くしナイトプール >です。
ナイトプール?インスタ映えでしょ、ナンパ待ちでしょ、はいはい。…そう思いかけてふと我に返った長井さん。経験してないのにディスるなんて!と思い立って行ったナイトプールで、長井さんが考えたこととは。