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  • 2018.03.28

ねえ、君たち絶対この後ホテル行くのになんで気付かないふりできるの?/長井短

終電間近の男女の二人の会話。「ホテル行こう」にたどり着くまでにすっかり桜の花びらも散っちゃうよ!なんてツッコみたくなるやり取りを耳にしたことや実際に経験した人も多いのでは?連載三回目を迎えた今回は、それをムードとして楽しめる人と、効率が悪いと省きたくなる人の差を長井短さんが分析します。

長井短さん連載第三回サムネイル画像

 日ごとに暖かくなってきて、もうすぐ春だなと思ったら雪です。雪の中書く今回の「内緒にしといて」は、もうすぐ春なので恋の話。

 みなさん、恋してますか?私はこう見えて毎日恋に落ちています。昨日も駅のホームで好きな人ができました。一昨日はサイゼリア、一昨々日は汚い中華屋、全員名前も声も知らないけど、「あ、かっこいいな」と思って、しばらく彼のことを考えます。次の日にはほぼ何も思い出せず、唯一覚えているのは「ツーブロックの眼鏡」。恋愛から遠ざかりすぎて、気づけばツーブロックの眼鏡なら誰でも好きになる病気になってました。やべーだろ。

ムードvs効率

 恋をできていない代わりに、飲食店でよく盗み聞きをしています。私の大好物はカップル結成、もしくはチェックイン直前の2人組の会話です。この間磯丸水産に行ったら、まさにゴールテープを切ろうとしている男女に出会いました。2人はどうやら友人関係。その裏にはしっかり下心が根を張って、互いに抱く気満々です。時刻は0時過ぎ。そろそろ終電の時間です。
男「時間平気?」
女「あ〜そろそろ終電かも」
男「そっか〜」
女「あ、でも明日休みだから大丈夫。明日早い?」
男「いや、俺も明日は休み」
女「あ、じゃあもうちょっと飲も〜」
男「そうだね」
女「・・・でもずっと磯丸は疲れちゃうね」
男「そうだね。店変える?」
女「う〜ん。でもちょっと飲み疲れたかも」
男「そうだね。カラオケでも行く?」
女「そうだね。あでも今日連休だから空いてなさそうじゃない?」
男「そうだね。どうしよっか。漫喫とか?」
女「そうだね。あでも漫喫だと喋れなくない?」
男「そうだね。」
そうだねの地獄・・いや、もう分かってるでしょ。分かるじゃん。もう2人ともホテル行きたいじゃん。行こうよ。混むよ?とっくに答え出てるって。

 真逆のパターンもあります。友達の男の子は気になる女の子と飲みに行く時必ず、
「あのさ、もう先に言うけど俺今日君とセックスしたいと思ってるんだ。どっちでもいいけど終電までに決めてくれる?終電乗らないならホテル行くよ」 効率良すぎ〜〜!でも、私個人の好みでいえば断然こっちがタイプです。だけどこの男の子はよく「もう!なんでそんなこと言うの!ムードなさすぎ!」と怒られるらしくって、ムード・・ムードとは・・・

 前者のチームムードの視点は、主観なのでしょうね。主観君も主観ちゃんも、ホテルの目の前で漫喫に行くふりしてる恥ずかしさなんて気にならないのです。だって、その恥ずかしさは2人の周りの空間が語っているだけだもん。空間なんて主観じゃ見えない。主観君たちにとって何より大切なのは、今2人の間を漂う空気なのです。

 一方効率重視の後者はゴリゴリの俯瞰タイプ。ホテルの目の前で漫喫の話なんて恥ずかしくて絶対にできません。俯瞰君俯瞰ちゃんは空気よりもそれを内包する空間を重視します。頭の中には常にナレーションが流れるし、自分の言動を他人事のように考察するので、気づかないふりなんて小芝居をしようものならすぐにもう1人の自分に馬鹿にされます。

君の主観が正直しんどい

 主観同士の甘い恋愛、俯瞰同士の砕けた恋愛、どちらも楽しそうだなぁ。だけど想像してみてください。主観×俯瞰の恋愛を。よく、彼女のために記念日のお祝いをするとかディズニーランドに行くなんて話を聞きますね。これってある種、「主観の彼女に最高のムードを提供するために俯瞰の彼氏が奉仕してる」ってことだと思うんです。だから、主観ちゃん×俯瞰君の組み合わせは結構あるんですよね。優しい俯瞰君が沢山いて優しい世界。でもこれ、逆はどうなんでしょう。主観君×俯瞰ちゃん。うっこれはなんだか暗雲・・・

 主観君とお付き合いしたことはないけれど、何度かご飯を食べに行った時、マジで噛み合わなかった。お喋りしていても、主観君が口にして気持ちのいい文章を朗読されているような気分になったのを覚えています。俯瞰君もきっと、私の言うこと1つ1つに「どうしてこんな言い方するんだろう」と思ってたんだろうな。ごめんね主観君。恥ずかしくって仕方なかったんです。薄暗いバーなんて、いかにも口説かれに参りましたって気がしちゃって行けません。入店した瞬間「お前自分のことちょっと良い女だと思ってるだろ?」って自分の声が聞こえました。そんなもん聞いちゃったらもう無理です。ごめんなさい。

全てを包み込む大俯瞰

 視点の違いで恋がおじゃんになるなんて悲しい。どうにかして避けたい。どうしたらいいかって?答えは簡単。「大俯瞰」です。俯瞰を超える大俯瞰。大俯瞰になれば、俯瞰の時に許せなかった色々も「可愛いな」って思えるはず。やり方は簡単です。例えば気になる男の子がちょっと痛いアプローチをしてきた時、「うわ、これは恥ずかしいな」と思う前に引いてみて!「彼は私の計算通りに行動している」もっと引いてみて!「地球は私の掌の上」ここまで引けば、もうほとんどのこと気にならない。人間関係をチェス盤に見立てるのです。痛い彼の思惑も「あ、そうやってキング取ろうとするのね。それはちょっと無理あるけど一旦チェックだけさせてあげるか」ほら、何だか男の子の行動1つ1つが可愛く思えてきませんか?同じ視点にいるからイライラしちゃうんです。私たち、もっと上に。神の視点で毎日を見てみませんか?

 ただ、弊害もあります。感情って振り子なので、イライラっていうマイナスの振り幅が減ればその分、ドキドキっていうプラスの振り幅も減っちゃうのです。うーんこれは悩む。「死ぬまでドキドキしたいわ」ってYUKI先生も歌ってますからね。どうしましょうかね。たった一つだけ解決策があって、それは「同じように大俯瞰の男の子と出会うこと」大好きな男の子と2人でチェス盤を囲むんです。まるで世界にふたりぼっちみたいじゃない?そんな夢みたいなこと叶わないかもしれないけど、もしそんなカップルがいたらきっと世界一性格の歪んだ悪魔のような2人組だろうな。友達減るだろうな。恋愛と友情。究極の二択を置き去りにして、今回のコラムはお終いにさせていただきます。

TEXT/長井短

次回は <ねぇ、私たちいつまでひとりぼっちを気取っていくの?/長井短>です。
新学期や新社会人になることの憂鬱の原因には、自分が新たなカーストに割り当てられることへの不安もありますよね。「イケてなかった」学生時代を過ごした(とはいえモデルの)長井さんは、憂鬱な4月をどうやって乗り切ってきたのでしょうか?

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ライタープロフィール

長井短
1993年9月27日生まれ、A型、東京都出身 ニート、モデル、女優
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