彼との付き合いが長くなり、「じゃあそろそろ結婚だね」と言われる機会も増えてきた。その度に曖昧に笑ってやり過ごすのだけど、たまに押しの強い人もいて、「早く親に会わせたほうが良い」「同棲しちゃいな」「いや、それはだめ」とわたしに結婚願望がある前提で話を進めてきたりする。大抵は年上の既婚者で、発言に悪意はない。だからこそ跳ね除けづらい、善意のアドバイスになっている。
現在わたしは29歳。ひと昔前なら「崖っぷち」と言われる年齢だ。
10代の頃の自分がタイムスリップしてきたら、今すぐ彼氏を追い込めとゼクシィで殴打されそうだけれど、今のところ、彼との関係を穏やかに維持する方針である。
ブスが「勝ち犬」になる方法
かつての自分がどうして結婚したかったのかと言うと、端的に言えば「そういうもんだと思ってたから」だ。今から15年ほど前、『負け犬の遠吠え』 という本が流行った。内容よりも「どんなに美人で仕事ができても、『30代以上・未婚・子ナシ』は女の負け犬!」という定義が世間に広まって、「負け犬」の烙印を押された女性タレントが、テレビの中でひど~いと笑う。そういう流れが以前はあった。
その頃わたしは中学生か、小学校の高学年だったので、自分が30代になる未来なんて想像もできなかった。なので焦りこそ生まれなかったけれど、わたしの中にひとつの価値観を植え付けた。「負け犬になってはいけない」。そして、逆に言えばブスでも仕事ができなくても、20代で結婚できれば『勝ち』なのだ、と。
10代のわたしは、当然今より若かったけれど、今よりずっと自信がなかった。容姿も頭も運動能力も平凡で、なんなら劣っているような気がした。だからお墨付きがほしかったのだ。何も持ってはいないけど、「とりあえずは勝ち組です」と。
商品自体は微妙でも、「モンドセレクション受賞」の金ピカのシールが貼れたなら、価値があると思ってもらえる。……いったい誰に? まずは周りに。そして、何より自分にだ。
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