マンガの評価が信じられない?

――そもそも、米代さんはどうしてマンガを描きはじめたんでしょうか?

米代:小学校のときには、百均で買ったノートにマンガを描いていましたね。1ページに1コマとかで、きちんとコマ割りやストーリーのあるものではなかったんですが。きちんと筋道だったものが描けるようになったのは高校のときです。周囲から「え、これ続きどうなるの」といった反応をもらえるのが嬉しくて、高3になって漫画家になりたいと思うようになりました。
 一応大学受験はして入学したのですが、それからすぐ応募した新人賞の最終選考まで残ったという通知がきて、担当編集の方にもついていただけることになったので大学をやめて、今にいたります。

――米代さんは前回、「恋愛とは承認だ」とおっしゃっていましたが、マンガを描いて評価されることは、米代さんにとって承認になっていますか?

米代:もちろん評価いただけるのはありがたいですし、承認が満たされる部分もありますが……信じられないですね。

――信じられない!?

米代:それもずいぶん失礼な話だなとは自分でも思っていますし、自分が他人の作品に「好きです」というときは誓って本心なんですけど、自分が言われるときはどうしても心のガードが残ったままなんですよ。「でもちょっと大げさに言ってくれてるんだろうな」とか「お世辞だろうな」とか思っておかないと、浮かれすぎちゃって、仕事に支障が出る……。

――言葉どおりに受け止めると嬉しすぎちゃうので自重していると(笑)。

米代:『カノン』の感想は、おかげさまで連載を読んでくださる方からいただいたり、イベントなどで読者の方とお話したりもしたので、だいぶ素直に受け入られてきてはいます。というか、あまりに身を削って描いているので、受け入れないとさすがに報われない(笑)。

――米代さんがいかに身を削ってマンガを描いているのか、今日は本当によくわかりました。
 最後に、AM読者の方にメッセージをお願いします。

米代:メッセージ……むしろ私がAM読者の方にアドバイスをもらいたいくらいですね……。きっと恋愛について楽しみつつも悩んでいる方が多いと思うので、かのんや私といっしょにその答えを探してみませんか?という気持ちではあります。恋愛について「こういう考え方もできるんだな」といろいろな選択肢を探している方にはぜひ読んでいただければ……。

――かのんとともに、米代さんが今後どう葛藤していくかも楽しみです。ありがとうございました!

米代恭(よねしろ きょう)
1991年生まれ。2012年、アフタヌーン四季賞佳作『いつかのあの子』でデビュー。
 既刊単行本に、性に悩む二人の青年の葛藤と成長をみずみずしく描いた『おとこのことおんなのこ』(太田出版、2013年)、友達代行サービスを生業とする青年が不登校の女子中学生のペットとなる『僕は犬』(秋田書店、2014年)があり、2015年より『月刊!スピリッツ』において『あげくの果てのカノン』(小学館、1巻・2巻 続刊)を連載中。
 芥川賞作家・村田沙耶香、押見修造、志村貴子らが絶賛する、みずみずしい感性に注目が集まる気鋭の女性作家。

Text/ひらりさ
編集者/ライター。BL・女性向けコンテンツを中心に取材・執筆する平成元年生まれの腐女子。