8年間思い続けた先輩の境宗介との不倫に走るメンヘラ女子・高月かのんを描く漫画『あげくの果てのカノン』。その作者、米代恭さんが、思考を重ねてこれまでになかった「恋愛」を描こうとする姿は一般読者に恋愛の果てしなさを垣間見させてくれます。
米代さんのその試みの軌跡に迫るインタビューを全3回でお届けします。
■第1回 <恋愛を描けない悩みに新作で向き合う>
不倫のフォーマットを構築して臨む
――恋愛経験がない状態で描いている『あげくの果てのカノン』。しかも、かのんの恋愛には「不倫」という特色があります。不倫を描く上で参考にしたものはありますか?
米代:不倫についての本や映画を読んだり観たりして、感じたことはメモしていました。『カノン』の構想をし始めたときはちょうどドラマの「昼顔」もやっていたタイミングで。
――「昼顔」、話題になってましたねえ。観てておもしろかったですか?
米代:すごくおもしろかったんですけど、私には吉瀬美智子と上戸彩の「百合」ドラマにしか見えませんでした……(笑)。「昼顔」以外にもいろいろな作品にふれて、「不倫したときの人の心の動き」とか「不倫のフォーマット」とか自分の中に全部構築してたんですよ。
――不倫のフォーマット!
米代:出会って、葛藤があって、付き合って、2人でルールを決めて、すぐバレて、転落があって……というような。で、『カノン』の話を考えるときもそのフォーマットを踏まえていこうと考えていました。
それで、経験者に話を聞く機会ができたときも、「あ〜きっとそのときはこう思ってたんでしょう」なんて自分なりに理屈をつけて話してみたんですけど……理屈じゃないんですよね。
――理屈じゃないでしょうねえ。
米代:自分が思ってたのと全然違う答えが出てきたり、浮気された奥さんが旦那と別れられなくて、周りの人も「やー、好きなんだもんねえ、しょうがないよねえ」と言っていたり。私が知識をもとに考えた感情っていうのは実際とずれているんだ……と。
恋愛って努力だけじゃどうにもならない分野ですよね。仕事や漫画は正しい努力の仕方を模索できるんですけど、恋愛だと、模索しているうちにその人との関係はダメになってしまったり、「相性だからしょうがないよ」と言われてしまったり……。知識と思考では太刀打ちできない。