女子力・妻力を磨くことが、必ずしもいいとは限らない
―実際に結婚後の生活はどうだったんですか?
家入:結婚したとき元夫はサラリーマンだったんですけど、起業するっていって、会社が大きくなるにつれて周りから「企業家の妻ってこういうものだよ」っていってくる人がいるわけですよ。聞いているうちにそれが正しいと思うようになってきて、そうしなきゃってなるでしょ。
黙ってニコニコ聞いていればいい奥さんとしての評価が高くなるから、本当は話したいことがたくさんあるのに、お客さんが来てもしゃべらない時期もありましたね。そんな風に、“女性である自分”を意識していた時期もあったと思います。
でも、そのときは全然おもしろくなかった。評価は上がっても自分が楽しくないから、あるときからちゃんと話すようにしたんです。そうしたら、私を人間としてみてくれる人もできました。“いい奥さん”を演じることで、存在感はどんどん薄らいでいましたね。
川崎:起業家の人って、いろいろなひとに出会うでしょ。私も端くれなので出会う必要性は分かるんですけど、大物と出会うことで「もっとこうなろう」とか、「この人のこういうところに近づこう」とか、刺激物とたくさん出会うから、よっぽど信念なり哲学なりを持っていないと、自分をもって行かれちゃうんですよね。
家入:そう。どんどん変わっていっちゃうの。
川崎:そうすると、昨日と今日で言っていることが違ってきたり。だから、よっぽど夫婦で話し込んでいかないと、妻を家に閉じ込めたままにしちゃったり、あまり会わなくなったり、夫婦のスタイルが変わっていっちゃう。企業家はすごく短いスパンでそうなるんだけど、ただ普通の人も10年タームとかでは変わっていくから、夫婦がやらなきゃいけないコミュニケーションとか、持っておかなきゃいけない約束事とか、そういうのがすごく大切だと思う。
家入:しかも、起業家って停滞することを怖がる人達ですよね。変わっていかないといけないって思う人達。
川崎:「成長!拡大!変化!」に憑りつかれた人種ですからね。
家入:ね~。でも、そんな元夫に対して私がいい奥さんでいなきゃいけないと思ったのは、そんなにオンデマンドじゃなかった気がするんですよ、今思うと。社会的にはそうしないといけないから、私がひとりで責任を感じてやっていただけで、別に元夫はそんなことを望んでいなかった気がする。
川崎:何を望んでいたの?
家入:社会的にダメなタイプでしょうか(笑)。元夫の周りでは男の子も女の子も、浴びるようにお酒を飲むとか、DVにあったとか、ダメンズにはまるとか、みんなそんな感じなんです。私もよく考えてみたら、もともとだらしなかったんですよね。親子丼しか作れなかったり、食器も洗わないで2,3日シンクの中に溜めていたり、生活力が全くなかったんです。妊娠中ってお腹が大きくなるじゃないですか。それに合わせて大きなパンツをはくでしょ、おへそまであるパンツ。私、シマシマのパンツをはいていたときに、「ハチ~♪ぶーん」とかやってたんです(笑)。
川崎:なるほど。ハチはかわいいな~(笑)。
家入:川崎さんが、女子力をムダに磨くなっていうのにも通じていると思うんですけどね…。女子力、妻力を私も磨いてきました(笑)。でも、川崎さんは企業家だから、妻が夫の変化を恐れるように、川崎さん自身が変化を求める部分もありますか?
川崎:ありますね~。ずっとそうでした。でも、長女が生まれたときに、ストップが掛かったんでしょうね。だから、変わったのは私で、元夫は変わらなかっただけなんですよ。夫婦間の契約違反は私の方だと言えます。
【次回へ続きます。お楽しみに!】
Text/千葉こころ