「たまのランチ会だから、おしゃれな店がいい」

例えば近所のファミレスや中華料理屋に集合して、さくっと小一時間飲もう、という気軽な誘いもあれば、メンバーに遠方の友人が含まれる場合は、どこか都心の店で飲もうということもある。
そのメンツが、かつては安居酒屋で集っていた友人たちであれば、リーズナブルな韓国料理屋やタイ料理屋なんかがチョイスされることが多い。

一方で、「たまのランチ会だから、おしゃれな店がいい」という意向のグループもあって、その場合は六本木や恵比寿や銀座の、イタリアンやフレンチの三、四千円くらいのコースになったりする。
そして、一杯目はスパークリングをグラスで。次は白をボトルで入れたけど、美味しくてあっという間に空いちゃったから、次は赤……なんて「せっかくだから」を言い訳にして、ボトルを入れていくと、驚いたことにお会計が8,000円とかになるのです。8,000円! ランチで8,000円! 自腹ランチで8,000円ですよ! 信じられます?

もちろんお金の価値観はそれぞれなので、「久しぶりの友人と会うランチに8,000円なんて、フツーじゃない?」という裕福な方もいらっしゃるとは思います。昼の12時から夕方前まで店に居座って、それなりの料理を楽しんで、ワインをしこたま飲んでいるのだから、値段としては妥当。
むしろ、これが夜だったらさらにそこから二次会、三次会に行って、帰りにタクシーで帰ったりすると、なんだかんだ15,000円くらい見積もらないといけないわけで、そういう意味でいえば、さほどは高くない。

しかし、こういうお店で開催される会では、その場にいる誰かが必ず、ワイングラスを片手に、「本当は、こういう素敵なお店は、デートで来たいよね。連れてきてくれる人がいたらいいのにねぇ……」なんて溜息をつくのです。

「連れてきてほしい」と話すのも楽しいけれど…

たしかに、恋人時代には、こうしたお店にだって頻繁に連れて来てくれていた配偶者も、夫婦となった今では、「えっ、贅沢だよ。ファミレスでいいでしょ」と釣った魚に餌をくれない。Tinderで出会った男性がいい感じのお店を予約してくれるのも、最初の一回だけ。

憧れのお高い店でランチ会をする主婦たちが本当に求めているのは、男性とデートで訪れることであって、それが叶わないから、仕方なく女子会を身代わりにしてるって、なんとも悲しい。とはいうものの、そういうことが話せるのが、人妻同士の女子会でもある。

わたしも、いいお店でご飯を食べるのは割と好きです。だからこそ、「連れてきてくれる人」がいないことを嘆くのではなく、「こういう店に、女だけで来れる」ことを喜び、胸を張っていきたいと思う次第であります。

Text/大泉りか