女性を焦らせるクソみたいなジンクス

 20代で大学を卒業して社会人になってから、35歳で結婚するまで、酒の席で手酌をしていると「嫁に行き遅れるよ」と言われることが、よくありました。もともとわたしは、自分のペースで飲みたい派で、しかも基本的に大酒飲みなので、お酌される度に「強制しなくても、自分で飲むから放っておいてくれ」と思っていましたし、お酌をされたお返しに、お酌をし返すのも面倒くさい。学生時代にキャバクラで働いていた経験があるので、人の酒がなくなったのを目ざとく発見する癖はついていますが、それでも自分が「お酌をされるのが面倒くさい」という考えの人間なので、相手にもなかなかお酌をする気になれないのです。

 ……ということを、「手酌は婚期が~」と言われるたびに滔々と語っていたので、そのうち「お酌されるの、嫌いなんだよね?」と知れ渡って、誰もお酌をしなくなりました。居心地の良さを勝ち取ったと同時に、こうるさい人という評価も得ることになりましたが。

 こういう「結婚できない脅し文句」で他によく聞くのが「ペットを飼うと…」「マンションを買うと…」というやつです。マンションについては若い頃は「ノーフューチャー! 27歳で死ぬ!」と思っていたので検討さえしませんでしたが、ペットには犬をかれこれもう12年くらい飼っています。親類から譲り受ける形で飼うことになり、やはり仕事仲間の男性に「結婚できなくなるよ」と揶揄されましたが、ペットを飼ってからもずっと恋人はいたし、やがて結婚もしました。昔の基準でいえば十分に「婚期を逃してから」の結婚だとされるのでしょうが、自分では特に遅い感じはしませんでした。周囲に独身の友人もたくさんいましたし。むしろ自由な独身生活に未練を残したまま結婚していたら、きっとうまくいっていなかったような気がします。

 思えば、周囲の幸せな結婚生活を送っている人で、「婚期が遅れる」と焦って結婚した人なんてひとりもいません。逆に「〇〇歳までに結婚する」と決めて結婚した人たちは、「××歳までに子供」「△△までにマイホーム」と計画に追われて、「パートナーが足並みを揃えてくれない」といった、「相手が〇〇してくれない」という不平をよく口にしている印象があります。人生に計画的なのは素晴らしいことですが、あまりにガチガチに設計すると、その通りに行かなかった時に感じるストレスが、いちいち大きいのかもしれません。

 出産を希望する場合は、悲しいことに女性の身体には期限がありますが、そうでなければいくつで結婚しようが関係のないことですし、結婚と出産を一緒に考えなくてもいい世の中になりつつあると思います。だから、ただ女性を焦らせるだけのクソみたいなジンクスは、さっさと滅びてしまえばいいのにな、と思います。なんせ、もう、保守的な田舎でも嫁が手酌で許される世の中なんですから。

Text/大泉りか

次回は<意外といます!新婦の女友達を口説くクズ新郎たち>です。
結婚式は出会いの場…と言われたりもしますが、それはふつう新郎の友達が新婦の友達と恋に落ちることを想定したもの。しかしこの世には、自分の結婚式で新婦の友達に手を出す、不倫クソ新郎がいるんです……しかも、意外なほどに。